研究課題/領域番号 |
20K21409
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
宮岡 佑一郎 公益財団法人東京都医学総合研究所, 疾患制御研究分野, プロジェクトリーダー (20549521)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / 1細胞 / HR / NHEJ / Cas9 |
研究実績の概要 |
ゲノム編集技術は様々な遺伝的改変を生じるが、従来のゲノム編集結果解析手法は、細胞を集団で扱うものがほとんどであり、個々の細胞で起きる編集結果を把握することができない。 そこで本研究では、高精度自動1細胞分注装置であるSPiSを用いて、ゲノム編集を実施したHEK293T細胞を単離し、1細胞由来のクローンを多数解析することを目指した。まず、ゲノム編集HEK293T細胞のSPiSによるクローン化の条件の最適化を進めた。その結果、CRISPR-Cas9を導入した細胞を同時にEGFPで標識して蛍光に基づいてソーティングを行い、その細胞集団をSPiSによってクローン化するプロトコルを確立した。また、プレートはマトリゲルでコーティングしておくことにより、細胞の生存率が向上することも見出した。 HEK293T細胞にRBM20の変異を導入し、SPiSによって200個以上のクローンを得た後、ゲノムDNAを抽出してデジタルPCRによってゲノム編集結果を検討した。その結果、1個の細胞の中で挿入・欠失変異が起きると、複数ある標的配列の1コピーだけが編集されるという場合よりも、複数コピーあるいは全コピーが編集されることが多いということが明らかになった。また、Cas9を発現していても、全くゲノム編集が起こらない細胞も多数観察された。 デジタルPCRによる解析系に加えて、標的配列をPCRで増幅して次世代シークエンスにより解析するAmplicon-seq系を立ち上げた。得られたクローンのそれぞれに対応するバーコード配列を持つプライマーを用いて、標的配列を増幅した後に全てを混合したライブラリーを作製し、次世代シークエンス解析を行った。その結果、デジタルPCRの結果と整合性のある結果が得られるAmplicon-seq系を確立できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲノム編集を実施したHEK293T細胞からのクローン単離は、Cas9、gRNAと共にEGFPを発現するプラスミドを使用し、EGFP陽性細胞をソーティングしてからSPiSによるクローニングを実施するというプロトコルを確立することで、効率的に行えるようになった。当初はデジタルPCRによるゲノム編集結果解析のみを計画していたが、Amplicon-seq解析を行えた方が解析効率と精度が高まると考え、系の確立に取り組み、実現することができた。 既にHEK293T細胞中の複数の標的配列において、挿入・欠失変異が連鎖的に起こりやすいという事実を見出しており、期待した成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
既にSPiSによるクローン単離プロトコルと、Amplicon-seqによるゲノム編集結果解析系を確立できているため、より多様なゲノム編集条件の比較を行っていく。また、挿入・欠失変異だけでなく、RBM20にR636S変異を導入した場合など、DNA組換え誘導についても解析を行う。多様なゲノム編集条件について具体的には、一本鎖DNAドナーと二本鎖DNAドナーとの比較、通常のCas9とHypaCas9などのCas9誘導体との比較、RBM20だけではなく他の遺伝子でのゲノム編集との比較、HEK293T細胞以外の細胞でのゲノム編集結果との比較、などである。 特に鎌状赤血球症のHBB c.17A>T変異の導入・修正、造血幹細胞やiPS細胞でのゲノム編集結果の解析を行う。iPS細胞では1細胞にすることによって細胞死が誘導されやすいため、1細胞培養に特化した培地や細胞外マトリクスの使用などによってクローン単離の効率を高める。 狙ったゲノム編集結果を1細胞中で最も効率よく誘導できるゲノム編集の条件を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症拡大のために、参加を予定していた学会に参加できなくなったため。デジタルPCRに加えて実施することとなった、次世代シークエンス解析の試薬購入に用いる。
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