研究課題/領域番号 |
20K21413
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
田村 康 山形大学, 理学部, 教授 (50631876)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / クリステ / リン脂質輸送 |
研究実績の概要 |
本研究は私達がシュチが酵母をモデル生物とした研究により独自に見出した,ミトコンドリア外膜から内膜へのリン脂質輸送が,クリステジャンクション形成に関わる因子MICOS複合体と共に機能することでクリステ膜が形成されると言う新知見を元に,より詳細にクリステ形成の分子機構を解明することを目的とする。具体的には出芽酵母の遺伝学を元に得られた上記知見を,ヒトの培養細胞を用いてより詳細に検討する。昨年度はHeLa細胞,U2OS細胞と言ったヒトの培養細胞を用いて,MICOS複合体の中心的サブユニットであるMIC60のノックアウト(MIC60-KO)細胞を構築した。さらに完全にクリステ膜を消失させるために,ミトコンドリア外膜から内膜へのリン脂質輸送因子であるPRELIやTRIAPをノックアウトした細胞MIC60-KO細胞の作製を試みた。しかしながら何度か作成を試みたいにもかかわらず二重遺伝子欠損株を単離することはできなかったため,これらの遺伝子の同時破壊が致死となる可能性が考えられた。 またクリステ形成に重要な因子の遺伝学的スクリーニングを行うために,網羅的な遺伝子欠損変異を導入するGecKOライブラリーのレンチウイルスを作製した。現在セルソーターによってミトコンドリア内膜のシグナルが低下する遺伝子群の探索を行っている。 さらにクリステ膜形成のin vitro再構成を行うために,MICOS複合体を出芽酵母細胞から大量調製する実験系の構築を行った。実際にプロテオリポソームに組み込むのに十分量のMICOS複合体を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では(1)ヒト培養細胞を用いたクリステ膜新生の可視化による解析,(2)遺伝学スクリーニングによる新規クリステ形成因子の同定,(3)in vitro再構成によるクリステ膜形成メカニズムの解析の3つの柱で研究を行っている。これまでに(1)MIC60遺伝子破壊HeLa細胞, U2OS細胞の構築成功していること,(2)網羅的な遺伝子欠損変異を導入するGecKOライブラリーのレンチウイルスを作製しミトコンドリア内膜のシグナルが低下する遺伝子群のスクリーニングをスタートしていること,(3)MICOS複合体を大量調製する実験条件の確立に成功していることから,研究が計画通り順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ヒト培養細胞を用いたクリステ膜新生の可視化による解析に関しては,栗栖手が完全に消失すると予想される二重遺伝子欠損株の作製が難しい可能性があるため(致死となってしまう),siRNAを用いた遺伝子ノックダウン実験を行うことで,一時的にクリステ膜形成を阻害できるかを検討していく。今年度は実際に電子顕微鏡解析を行い,クリステ膜の観察を行っていく。 (2)遺伝学スクリーニングによる新規クリステ形成因子の同定に関しては,得られた細胞集団に含まれるsgRNAの配列を次世代シーケンサーを用いて明らかにすることで,クリステ形成に重要な新規因子の同定につなげる。 (3)in vitro再構成によるクリステ膜形成メカニズムの解析では,MICOS複合体を組み込んたプロテオリポソームを作製し,電子顕微鏡によりその形態を観察する。またそのリポソームにリン脂質輸送タンパク質を用いてリン脂質を供給した場合に,どのような膜形態の変化が生じるかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費の採択日が遅れ,使用する研究費(研究期間)が少なく(短く)なったので,経費を来年度に繰越し,計画していた電子顕微鏡解析などを次年度に集中的に行う予定。
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