今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は研究分担者により開発された速やかなタンパク質分解系であるAuxin Inducible Degron (AID)法【Nat Methods 6:917 (2009)】を用いて、哺乳類培養細胞系において、人為的な細胞周期コントロールを行うことである。この目的のためには速やかなタンパク質分解系であるAID法のみならず、標的とする因子をどのようにして細胞内に導入するかも重要な問題となる。本年はテトラサイクリン依存的な標的タンパク質発現系(Tet on system)を用いてCdk1dn, Cdk2dn, もしくはCDK阻害因子(p16, p21, p27)の発現誘導を行った。しかしながらテトラサイクリン依存的な標的タンパク質発現系は大過剰に標的タンパク質の発現が起こってしまうため、AID法による標的タンパク質の分解が追いつかず、分解が十分に起こらないということが明らかとなった。そのため、今後は発現量を抑えたタンパク質発現系を用いてCdk1dn, Cdk2dn, もしくはCDK阻害因子(p16, p21, p27)の発現誘導を行う。また他の方法によって、細胞内への上記の因子の導入が行えないかを検討する。Cell-penetrating peptide (CPP)と総称される膜透過性ペプチドはこれを付加したタンパク質の膜透過を促進する。また、ピレンブチレートを用いることによって、膜透過性をさらに向上させることが可能であり、細胞にダメージを与えることなく、細胞にタンパク質を導入することが可能である。そのため、このCPPを用いて上記の細胞周期因子を細胞内へと導入し、AID法によって導入されたタンパク質の分解を行うことができないかを検討する。
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