ニワトリ胚後腸由来の細胞を用いて「腸収縮性オーガノイド」を作製した。腸収縮オーガノイドは直径約100マイクロメーターの細胞塊で、規則的な収縮を繰り返す。またGCaMPを用いた解析から、細胞内Ca2+濃度の変化がオーガノイド構成細胞間で顕著に同期することがわかった。さらにオーガノイド内では、蠕動運動のペースメーカー細胞といわれているカハール介在細胞(Interstitial Cells of Cajal: ICC)が内側の細胞集団を構成し、外側の一層の細胞は平滑筋であることが免疫染色法により明らかになった。TuJ1染色の結果、神経系の細胞はオーガノイドにはほとんど含まれていなかった。このことから、この腸収縮オーガノイドを用いることで、ICCと平滑筋の間にみられる細胞間相互作用が高解像度で解析できることが期待された。事実、GCaMPシグナルを指標にして、ICC同士、平滑筋同士、そしてICC-平滑筋間のCa2+変化を計測したところ、ほぼ完璧な同期現象が認められた。次にこれらの細胞間相互作用の制御機構を知るために、さまざまな薬剤処理を行ったところ、一部においてギャップジャンクションの関与が明らかになった。蠕動運動を制御する細胞間相互作用のしくみは、その重要性に比してほとんどわかっていないのが現状である。この研究で開発した腸収縮オーガノイドは、これらの課題を突破するための有用なツールになると期待される。
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