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2021 年度 実施状況報告書

栄養素を介した根と地上部の間の概日時計のフィードバックループの存在と意義

研究課題

研究課題/領域番号 20K21428
研究機関奈良先端科学技術大学院大学

研究代表者

遠藤 求  奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (80551499)

研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2023-03-31
キーワード概日時計 / シロイヌナズナ / 長距離シグナル伝達 / カリウム
研究実績の概要

これまで植物の概日時計は細胞自律的に機能していると長らく考えられてきたが、植物もまた動物と同様、異なる器官間で時間情報をやりとりすることで、情報の統合を行っているらしいことが明らかにされつつある。しかし、これまでに報告されている器官間での時間情報伝達はほとんどが地上部から根への情報伝達であり、根から地上部への時間情報伝達の証拠は得られていない。
そこで私たちは植物が根から吸収する栄養素に着目し、これが概日リズムにどのような影響を与えているかを解析した。その結果、時計遺伝子PRR7がAHA1を介して根からの周期的な陽イオン吸収を担っていることが示された。さらに、吸収されたカリウムなどの陽イオンは道管駅を通じて地上部へと輸送され、地上部で概日リズムを安定化していることが示された。一方で、時計変異体やaha1変異体などでは栄養吸収リズムが異常になり地上部の概日リズムが不安定化することも明らかにされた。さらに接ぎ木実験によっても根の影響が地上部に伝わっていることが示され、根から地上部へのカリウム等の陽イオンを介した時間情報伝達の存在を初めて明らかにした。
こうした根から地上部への時間情報伝達の意義を明らかにするため、シミュレーションによって地上部から根だけのシグナルの場合、根から地上部だけのシグナルの場合、両方向のシグナルがある場合、ない場合のそれぞれについて概日リズムの安定性を調べたところ、両方向のシグナルが存在した場合には顕著に概日リズムが安定化されることを見出した。これにより、植物は地上部から根と根から地上部の両方向のシグナル伝達を通じて、変動する環境においても安定的な概日リズムを維持していることが示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究自体は概ね順調に進んでおり、根から地上部への時間情報伝達の存在を明らかにするとともに、リンによる制御も明らかにしつつあり、栄養素がさまざまな制御を通じて概日リズムに影響を及ぼしていることが明らかになっている。
その一方で、投稿論文の採択は遅れており、現在再投稿の準備中である。

今後の研究の推進方策

再投稿の準備をなるべく早く終わらせる必要があり、いくつかの追加実験を行っている。具体的には道管液中のイオン濃度を計測が求められており、必要となる試薬等が準備できしだい実験に取り掛かる予定である。
さらに、カリウムなどの陽イオン以外にもリン酸などの陰イオンも概日リズムに影響を与えることを確認しているため、これらについても同様の実験を併せて実施し、結果を強固なものとする。

次年度使用額が生じた理由

コロナウイルスの影響により、必要となる試薬等が納入されなかったため。これにより道管液中のイオン濃度の計測が年度内に実施することが困難となり、次年度に計画を延期した。

  • 研究成果

    (21件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)

  • [雑誌論文] Sulfanilamide Regulates Flowering Time through Expression of the Circadian Clock Gene LUX2022

    • 著者名/発表者名
      Hirohata Atsuhiro、Yamatsuta Yuta、Ogawa Kaori、Kubota Akane、Suzuki Takamasa、Shimizu Hanako、Kanesaka Yuki、Takahashi Nozomu、Endo Motomu
    • 雑誌名

      Plant and Cell Physiology

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1093/pcp/pcac027

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Color-Changing Fluorescent Barcode Based on Strand Displacement Reaction Enables Simple Multiplexed Labeling2022

    • 著者名/発表者名
      Makino Koki、Susaki Etsuo A.、Endo Motomu、Asanuma Hiroyuki、Kashida Hiromu
    • 雑誌名

      Journal of the American Chemical Society

      巻: 144 ページ: 1572~1579

    • DOI

      10.1021/jacs.1c09844

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Spatially specific mechanisms and functions of the plant circadian clock.2022

    • 著者名/発表者名
      Davis W, Endo M, Locke JCW.
    • 雑誌名

      Plant Physiology

      巻: - ページ: -

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Na + /Ca2+ exchanger mediates cold Ca2+ signaling conserved for temperature-compensated circadian rhythms2021

    • 著者名/発表者名
      Kon Naohiro、Wang Hsin-tzu、Kato Yoshiaki S.、Uemoto Kyouhei、Kawamoto Naohiro、Kawasaki Koji、Enoki Ryosuke、Kurosawa Gen、Nakane Tatsuto、Sugiyama Yasunori、Tagashira Hideaki、Endo Motomu、Iwasaki Hideo、Iwamoto Takahiro、Kume Kazuhiko、Fukada Yoshitaka
    • 雑誌名

      Science Advances

      巻: 7 ページ: -

    • DOI

      10.1126/sciadv.abe8132

    • 査読あり
  • [学会発表] 時計遺伝子PRR7は光受容体phototropinのシグナル伝達系を制御する2022

    • 著者名/発表者名
      森本 隆弘, Carlo F M Gian 粕谷 日向子, 久保田 茜, 高橋 望, 中道 範人, 遠藤 求
    • 学会等名
      第63回日本植物生理学会、オンライン
  • [学会発表] 栄養素の輸送を介した器官間でのカップリングが概日時計の安定性を高める2022

    • 著者名/発表者名
      上本 恭平, 国本 由美, 森 史, 伊藤 浩史, 江頭 春樹, 久保田 茜, 木下 俊則, 荒木 崇, 遠藤 求
    • 学会等名
      第63回日本植物生理学会、オンライン
  • [学会発表] Different root expression patterns of circadian clock in Arabidopsis thaliana2022

    • 著者名/発表者名
      Yu Leng, Akane Kubota, Nozomu Takahashi, Tatsuaki Goh, Motomu Endo
    • 学会等名
      第63回日本植物生理学会、オンライン
  • [学会発表] 組織特異的な時計遺伝子の機能解明2022

    • 著者名/発表者名
      大畑 駿一郎, 高橋 望, 久保田 茜, 遠藤 求
    • 学会等名
      第63回日本植物生理学会、オンライン
  • [学会発表] B-boxファミリーGroupVは低温下で花成を制御する2022

    • 著者名/発表者名
      近藤 祐雅, 久保田 茜, 菅野 茂夫, 村中 智明, 高橋 望, 今泉 貴登, 遠藤 求
    • 学会等名
      第63回日本植物生理学会、オンライン
  • [学会発表] Time to update the external coincidence model in Arabidopsis2021

    • 著者名/発表者名
      Motomu Endo
    • 学会等名
      Sapporo Symposium on Biological Rhythm 2021
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 時差ボケ実験から植物の外的符合モデルを再考する2021

    • 著者名/発表者名
      久保田 茜, 山本 いずみ, 遠藤 求
    • 学会等名
      第28回 日本時間生物学会学術大会
    • 招待講演
  • [学会発表] Clock genes show different spatiotemporal expression in Arabidopsis thaliana root2021

    • 著者名/発表者名
      Yu Leng, Akane Kubota, Nozomu Takahashi, Tatsuaki Goh, Motomu Endo
    • 学会等名
      第28回 日本時間生物学会学術大会
  • [学会発表] 地上部-根間での双方向カップリングによる概日周期の安定化の仕組み2021

    • 著者名/発表者名
      上本 恭平, 国本 有美, 荒木 崇, 遠藤 求
    • 学会等名
      第28回 日本時間生物学会学術大会
  • [学会発表] Seasonal cues control the daily expression patterns of FT to optimize flowering time in nature2021

    • 著者名/発表者名
      Akane Kubota, Yusuke Ozaki, Yoshinori Kondo, Motomu Endo, Takato Imaizumi
    • 学会等名
      第44回分子生物学会年会
    • 招待講演
  • [学会発表] 地上部の概日時計による根毛伸長メカニズムの解析2021

    • 著者名/発表者名
      池田 ひかり, 内川 大雅, 近藤 洋平, 久保田 茜, 遠藤 求
    • 学会等名
      日本植物学会 第85回大会、オンライン
  • [学会発表] 野外環境における光と温度によるFT遺伝子の発現制御機構2021

    • 著者名/発表者名
      久保田 茜, 近藤 祐雅, 遠藤 求, 今泉 貴登
    • 学会等名
      日本植物学会 第85回大会、オンライン
  • [学会発表] 高温による花成制御機構の解析2021

    • 著者名/発表者名
      尾崎 友亮, 久保田 茜, 今泉 貴登, 遠藤 求
    • 学会等名
      日本植物学会 第85回大会、オンライン
  • [学会発表] 栄養素の輸送を介した器官間でのカップリングが概日時計の安定性を高める2021

    • 著者名/発表者名
      上本 恭平, 国本 有美, 森 史, 伊藤 浩史, 久保田 茜, 江頭 春樹, 木下 俊則, 荒木 崇, 遠藤 求
    • 学会等名
      日本植物学会 第85回大会、オンライン
  • [学会発表] シロイヌナズナの根を用いた概日時計による発生制御機構の解明2021

    • 著者名/発表者名
      内川 大雅, Yu Leng, 近藤 洋平, 久保田 茜, 遠藤 求
    • 学会等名
      日本植物学会 第85回大会、オンライン
  • [学会発表] 概日時計を介した植物の季節認識機構の制御2021

    • 著者名/発表者名
      廣畑 敦洋, 山蔦 祐太, 小河 香織, 久保田 茜, 鈴木 孝征, 遠藤 求
    • 学会等名
      日本植物学会 第85回大会、オンライン
  • [学会発表] 日中の高温は朝 FT の誘導を介して花成を促進する2021

    • 著者名/発表者名
      尾崎 友亮, 久保田 茜, 今泉 貴登, 遠藤 求
    • 学会等名
      日本植物学会 第85回大会、オンライン

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公開日: 2022-12-28  

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