高分解能質量分析装置を用いて、浸透圧ストレス依存的に細胞外に放出されるペプチドを網羅的に同定した。その結果、332のタンパク質またはペプチドを同定することに成功した。次に、浸透圧ストレス依存的に細胞外に放出されたペプチド群のリストを用いてGO解析を行った。その結果、糖結合や抗酸化作用に関わる遺伝子群が有意に多く存在していることが示された。これらのタンパク質は主に細胞内で機能することが知られていることから、培養液には、細胞外に放出されるタンパク質だけでなく、細胞内で機能するタンパク質も含まれていることが分かった。一方、細胞間シグナル伝達に関わるタンパク質は修飾を受けることが知られていることから、タンパク質修飾に着目し再解析を行った。先に同定したペプチドのうち、酸化やトリアラビノシル化などの修飾を受けたペプチドを対象に、GO解析を行った結果、シグナル受容体結合やキナーゼアクティベーター活性に関わる遺伝子群が有意に多く存在していた。一般的に受容体は、細胞外に存在するリガンドが結合し、細胞質内のキナーゼドメインが活性化することで、細胞内シグナル伝達を制御する。またそのシグナル伝達にはタンパク質リン酸化酵素が関わることが知られている。したがってこれらの結果は、修飾を受けたペプチド群が、細胞間シグナル伝達に関わることを示唆する。以上の解析から、細胞外に放出されるタンパク質群の同定、および機能解析には修飾による絞り込みが有効であることが示され、ストレス情報の共有メカニズムを制御する重要な因子群の同定に成功したといえる。
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