研究課題
本研究では、海洋メタゲノムデータから発見された赤色光受容体フィトクロムと青色光受容体クリプトクロムの構造を併せ持つ新型キメラ光受容体PHYCRYの遺伝子について機能の解明を進めた。論文化にともない、PHYCRYをDualchorome1(DUC1)と命名した。2022年度は以下を実施した。生物的機能解析については、プラシノ藻におけるRNA-seq解析を進め、橙色光による遺伝子制御を明らかにした。タバコの葉一過的発現系の局在解析の結果、DUC1-GFPは核に局在していた。プラシノ藻のDUC1欠損変異体の作成については、相同組換えによる形質転換法の確立を進め、プロモーターの改変などを試みたが、形質転換体は得ることが出来なかった。プラシノ藻Pycnococcus provasoliiの完全ゲノム配列を解析したところ、LHC遺伝子が重複して存在していることが明らかになり、RNA-seqの解析により光により制御されていることが明らかになった。本研究課題では、DUC1について海洋浮遊性微細藻類のプラシノ藻の一種であるP. provasoliiが保有していることを明らかにし、DUC1のフィトクロム領域は橙色光と遠赤色光で可逆的に光変換し、クリプトクロム領域は青色光を吸収するということを明らかにした。また、プラシノ藻類においてDUC1が吸収する橙色光による遺伝子制御が見られることを明らかにし、DUC1 がシロイヌナズナのCRY2の機能を部分的に相補することが示唆された。また、タバコの一過的発現系で核局在する事が示唆された。P. provasolii ゲノム配列解析により、DUC1以外の光受容体、光情報伝達関連遺伝子が存在し、LHC遺伝子の重複が明らかになった。これらの結果により、DUC1やこれらの遺伝子が、プラシノ藻が海水中の多彩な光環境への適応することに寄与したと推察された。
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