睡眠は神経を有するすべての動物に保存されている生命現象であるが、その機能はもちろん、分子メカニズムに関してもよく理解されていない。本研究では、申請者がショウジョウバエを用いて独自におこなった機能獲得型の大規模な行動スクリーニングから同定された遺伝子に着目し、睡眠の分子メカニズムに迫ることを目標とする。特に遺伝子を発現させると睡眠が減少した遺伝子に着目し、それぞれの機能に関してつぶさに解析をおこなうことを目的とする。まずそれぞれの遺伝子に対するRNAiノックダウンをおこなったところ、多くのRNAiを脳神経特異的にノックダウンすると睡眠が減少することが判明したた。またある系統ではノックダウンをすると睡眠のパターンが乱れる遺伝子も同定した。次にCRISPR/Cas9を用いて同定された遺伝子に対するノックアウト系統を試みたところ、すべての遺伝子に対してノックアウト系統を得ることに成功した。しかし、それぞれの遺伝子に対するノックアウト系統のホモ接合体では睡眠に異常を見つけることはできなかった。また、一部の遺伝子に関してはノックアウト系統ではホモ接合体で致死のため睡眠の重要性を検証することが不可能であった。一連のRNAiノックダウンやノックアウト実験から時期特異的、あるいは組織特異的に同定した遺伝子が睡眠に対して重要な役割を担っている可能性が示唆された。
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