研究課題/領域番号 |
20K21442
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中田 敏是 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80793190)
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研究分担者 |
小島 渉 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (70750462)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 昆虫 / 飛行 / 進化 / 甲虫 |
研究実績の概要 |
本研究では、甲虫をモデル生物として、昆虫の飛行形態における「トレードオフ仮説」の検証を通して、昆虫の多様な飛行メカニズムの解明を目指す。本年度は、以下に示すように、環境・解析手法を構築し、予備実験を行った。 1)撮影環境の構築 本研究では、甲虫の飛行時の翅・胴体の運動を精度よく測定するために、赤外線の照明を用いた撮影環境を新たに構築した。本環境では、高速度カメラの画角の背景に赤外線の照明を配置することで、甲虫の影を撮影することができる。甲虫と背景のコントラストが大きいため、後述の解析なども行いやすい画像を取得できる。ただし、対象としていた昆虫であるハナムグリの羽ばたき周波数が早く、当初予定していた照明設備・撮影環境では、撮影が不可能ではないものの、高速度カメラの画角を全て使うことができず、データ取得の効率が低下してしまうことがわかった。 2)画像解析手法の構築 飛翔する甲虫の特徴点を自動でトラッキングするために、深層学習を用いた画像解析を検討した。本手法では、学習データの構築のために数百枚程度の画像を手動でクリックする必要があるものの、一度この学習データが準備できれば、非常に精度よく自動で特徴点をトラッキングできる。先述の撮影環境において、自動トリガーを用いた飛行画像の自動取得なども検討しており、これまでに例を見ない膨大な量のデータを取得・解析することが可能となりつつある。 3)フライトミルを用いた実験 上記の環境構築と並行して、フライトミルを用いて、簡易的な飛行性能の評価と高速度撮影を行った。フライトミルは昆虫に前進(回転)方向への移動を許容するため、飛行速度や効率などの評価には有効であるが、回転によって羽ばたき運動が左右で非対称となるため、次年度以降に行うシミュレーションのための羽ばたき運動の取得には、フライトミルは適さないということが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により、予定していた昆虫の採取や実験ができなかったため、当初の計画よりもやや遅れていると判断した。しかし、環境の検討・構築はほぼ完了しており、データ取得・解析の準備は整っているため、本年度はデータ取得に集中し、また、効率的なデータ取得ができるよう撮影環境に改良を加えることで、この遅れを取り戻す予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、キャンパス内で昆虫を採取し、撮影実験を行う予定である。撮影実験では、昆虫を繰り返し飛行させる系を紫外線による誘導などを用いて構築・統合し、人が立ち会わなくても飛翔甲虫の画像を取得し続けるシステムを用いて、膨大なデータの取得を目指す。ここで得られたデータを用いてシミュレーションを行うことで、飛翔甲虫の効率や安定性を評価する。 また、視覚刺激などを用いて飛翔甲虫の機動性を評価する実験も、上記の効率・安定性評価と並行して行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により、予定していた昆虫採取や学会参加ができず、次年度使用額が生じた。繰越分は、当初の予定通り、次年度以降の昆虫採取や学会参加に充てると共に、新たに問題があると判明した撮影環境での照明設備や計算機器の充実などに充て、有効に利用する。
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