研究課題
人類は言語を操り、複雑な社会や文明を構築するなど、極めて高次で固有の脳機能を獲得してきた。ヒトと他の哺乳類の間ではゲノム構造や保有する遺伝子レパートリーが高度に保存されており、個々の遺伝子産物のアミノ酸配列もマウスとの間で平均80%以上、チンパンジーとの間で99%が同じである。このような遺伝子配列レベルでの高い保存性にもかかわらず、脳機能の種差が生まれ、ヒトが固有の高次脳機能を獲得した進化的機序として、本研究では脳神経回路構築の際にシナプス形成の標的特異性を担うマイクロエクソンのスプライシング機構に注目した。主要なシナプス誘導因子(シナプスオーガナイザー)の一つであるPTPRDはその細胞外領域に3つのマイクロエクソン(3~27ntの極めて短いエクソン)に由来するペプチドの取捨選択によって、シナプス形成の標的選別と誘導するシナプスの性質決定を担っている。これらのマイクロエクソンの取捨選択パターンがヒトとマウスでどのように異なるかをヒトiPS細胞由来神経細胞とマウス神経細胞を用いて比較解析した。その結果、特定のマイクロエクソンの選択比率がヒトiPS細胞由来神経細胞では低いことがわかった。また、これらのマウスおよびヒトのPtprd/PTPRD遺伝子のマイクロエクソンの選択率は神経活動によっても数時間以内に鋭敏に調節を受けることが明らかになった。しかしながら、神経活動によるマイクロエクソンの選択調節パターンの変化はマウスPtprd遺伝子とヒトPTPRD遺伝子では大きく異なることがわかった。このことは、ヒトとマウスの間で神経活動依存的な神経回路構築の機構が異なる可能性を示唆するものである。
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Nature Communications
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