研究課題
本研究計画ではこれまで強く関心が払われてこなかった、動物化石の歯牙エナメル質中のタンパク・ペプチドに着目し、その構成要素であるアミノ酸ごとの安定同位体比に基づく生物体の食性復元法を開発する。計画の初年度である本年度は、すでに管理下にある資料に加え、新たに更新世のものを中心に、本州および北海道のナウマンゾウやマンモスゾウといった国内の化石資料の収集や、海外研究者との情報交換を行った。分析条件の検討については、大型の現生草食哺乳類を主な対象とし、その歯牙資料を用いてエナメル質中タンパクの抽出のためのプロトコールを考案し、現在最適化を図っている。実験の最後のステップである安定同位体分析を見据えて、抽出に最適な試薬やpH、温度等を検討した。その際に、今後安定同位体分析と並行して実施する可能性のあるペプチド配列解析に悪影響が出ないような条件検討も行っている。これらの作業に必要な機器・道具類を一通り揃え、研究機関に配備した。一方で、化石資料の予備的な分析も試み、どの程度古い時代までタンパク・ペプチドが残存しうるのか現在検証中である。今後は特に資料中の存在量が多いアミノ酸に着目して、その単離・精製作業を進める。作業のルーチン化が終わり次第、利用可能な資料を順次処理していく予定である。研究計画に必要な数の資料はすでに確保しているが、さらに様々な環境条件の地域のものを追加する。特に日本とは大きく環境の異なるヨーロッパや東南アジアの資料収集を図る。
3: やや遅れている
コロナ禍の影響で当初計画していたスケジュールよりも実験が遅れている。また所属研究機関の変更に伴い、新たに実験環境を整備する必要が生じたため、その分計画がずれ込んでいる。
実験環境が整い次第計画を再開・遂行していく。本年度は特に歯牙資料からのアミノ酸の抽出作業とその後のクロマトグラフィーによる単離作業に注力し、分析試料数を増やす努力を払う。そのためにアルバイトを雇用し、作業のルーチン化を進める。
コロナ禍に際し実験計画に遅れが生じたため、一部の装置類や試薬の購入を見合わせた。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
Journal of Human Evolution
巻: 154 ページ: 102967
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Journal of Archaeological Science: Reports
巻: 36 ページ: 102869
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ホモ・サ ピエンスのアジア定着期における行動様式の解明 (「パレオアジア文化史学」計画研究A02班2019年度 研究報告)
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https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/clip/20210318_g01/