研究課題
エディアカラ期には海綿と刺胞動物が存在したとされ、その地層からは等割と盤割様の胚化石が発見されていますが、現生の海綿と刺胞動物は盤割様の発生をしないので、胚化石の親生物は不明でした。そのような折、刺胞動物で初めて胚化石と同様の初期卵割をするサンゴを発見しました。そこで、胚化石と現生のサンゴ胚の生体元素(主に金属元素)の分布を比較分析し、胚化石の生物門の特定に挑みました。残念ながら、コロナ禍で海外出張ができず、また、手持ちのエディアカラの岩石からは分析に適した胚化石を採取することができませんでした。一方、現生のサンゴでは微量金属元素の分布を全て明らかにできました。微量元素・同位体分析を専門とする学習院大学の大野剛教授との共同研究において、まずは、卵と精子を年間通して手に入れることのできるアフリカツメガエルの胚を用いて、微量金属元素マッピングの条件検討をおこなってきました。その結果、樹脂切片をレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析装置(LA-ICP-MS/MS)で分析すると、発生胚中のイオン化された微量元素が綺麗に分離検出できることがわかりました。その上で、前述したサンゴの金属元素マッピングを作成することができました。例えば、未受精卵においては植物極側にPやS、動物極に金属元素が偏在していることがわかりましたし、単細胞である未受精卵の段階から偏在が起きていること、更に動物極は植物極に比べて卵黄が少なく細胞分裂が活発に行われる場所であることから、細胞分裂や発生運命決定に関与していると考えられました。また、受精時のCa waveが精子の突入点である動物極側から植物極に向かって拡散している様子も綺麗に捉えることができています。さらに、ヒ素が胚の表面に浸透している様子も明らかとなりました。あとは引き続き、胚化石を手にいれて分析を続けます。
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Ocean & Coastal Management
巻: 232 ページ: 106371~106371
10.1016/j.ocecoaman.2022.106371