研究課題
本研究は、陸上植物にもっとも近縁な接合藻類に注目し、植物の多細胞化と陸上進出に必須であった細胞間コミュニケーションの端緒を明らかにすることを目的としている。そのため、2種のホシミドロ目藻類(ヒメミカヅキモ、アオミドロ)を用いて、細胞分化、細胞増殖に関わるリガンド・RLKペアの特定を行うことを通して、陸上植物へと進化する上で重要な役割を示した細胞間コミュニケーションの実体に迫ることを目的とした。ヒメミカヅキモのプラス型細胞ゲノムから、420種、マイナス型細胞ゲノムから372種のRLK遺伝子の存在を確認した。実際に細胞培養液から、小分子ペプチドの同定を進めているが、ペプチドの同定に至らなかった。糸状性のアオミドロについては、フィールドから新たに単離した株の中から、顕微測光分析により、比較的ゲノムサイズが小さい(0.5~1.5 Gbp)と思われたSpirogyra parvulaのゲノム解読を進めた。アセンブルした結果、ゲノムサイズが約50 Mb程度であると推定され、アオミドロの栄養生殖期の細胞では染色体が核内倍加した状態でまとまっている、または同質倍数体ゲノムを持つことなどを示唆するものとなった。さらに、アセンブルされたゲノムから遺伝子予測を行ったところ、15042遺伝子座が見出された。特定された遺伝子の中から、176種のRLK遺伝子の存在を見出した。さらに有性生殖期および栄養生殖期の細胞から3回独立にRNAを抽出し、比較trancriptome解析を行ったところ、有性生殖期に4倍以上発現上昇したRLK遺伝子を18種、1/4以下に発現量が低下したRLK遺伝子を16種見出した。
2: おおむね順調に進展している
アオミドロのゲノム解読が進み、遺伝子アノテーションおよび比較transcriptome解析まで進んだ。2種のホシミドロ目藻類のゲノム情報から、RLK遺伝子の比較が可能となり、概ね順調に進んでいる。
アオミドロおよびヒメミカヅキモのゲノム中に含まれるRLK遺伝子の比較を行い、ヒメミカヅキモにおいて機能喪失もしくは欠落している遺伝子を特定する。また、仮根形成に関わるRLK遺伝子の同定を目指す。ヒメミカヅキモにおいては、細胞増殖因子の同定を目指す。
コロナによる研究制限、物資不足などが重なり、残額が生じた。アオミドロゲノムについては、非常に密に遺伝子が並んでおり、遺伝子の開始部位と末端部位を同定しにくい。また、一般にRLK遺伝子は非常に長い傾向があるため、正しい全長cDNA情報を得るため、CAGE解析を行う。
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