研究課題/領域番号 |
20K21452
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研究機関 | 長浜バイオ大学 |
研究代表者 |
小倉 淳 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (60465929)
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研究分担者 |
保科 亮 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 助教 (40373089)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 共生 / 巨大ウイルス |
研究実績の概要 |
本研究では、巨大ウイルスが他の生物に全ゲノム挿入された世界最初の発見事例をもとに、全ゲノム挿入先生物への影響に関する解析を行っている。巨大ウイル スとは、最大1umのサイズと1Mbを超えるゲノムを持つウイルスだが、配列における変異速度が激しく系統だった進化解析は非常に難しい上、過去にホスト生物な どにどのような影響を与えていたかは明らかになっていない。ミドリゾウリムシに細胞内共生をするクロレラ(Chlorella variabilis)は、共生により巨大ウイル ス(PBCV)から保護されているが、外界に放出されると巨大ウイルス(PBCV)に感染し死滅してしまう 。一方、共生クロレラの近縁種だがミドリゾウリムシに共生 しない自由生活クロレラ(C. vulgaris)は、巨大ウイルスの全ゲノムを自身のゲノムの中に獲得していて、ウイルス抵抗性を示すことを研究代表者らは発見した。 今年度は、二次共生初期における共生体のゲノム変化に着目し共生への移行に伴う遺伝子の変化を調べるため、C. variabilis のゲノムを近縁の自由生活種と比較した。また、共生の遺伝的メカニズムを明らかにするために、C. variabilisの共生条件下と非共生条件下でのトランスクリプトームを解析した。その結果、C. variabilis の遺伝子は、細胞壁の生合成と分解、宿主との代謝交換に関与し、共生において重要な役割を担っていることが分かった。本研究は、近縁の共生種と非共生種のゲノム比較、および共生下でのトランスクリプトーム比較を用いて、二次共生という第二段階について新たな光を当てたものである。この結果をウイルスの挿入イベントとの関連を見ることにより、巨大ウイルスのゲノム挿入がもたらした生物進化の影響を解析することができると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
社会情勢の変化から試薬の納品の遅滞、研究時間の減少等の影響から多少の研究遅延が見られた。今後はスムーズな研究推進が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
巨大ウイルスの配列や機能からウイルスが種分化や共生の原動力となったかを解明することを目的とした研究を推進する。今後の研究の方針としては、挿入された巨大ウイルス遺伝子がホストで機能しているかについての遺伝子発現解析、ホストに挿入された巨大ウイルス遺伝子のうち偽遺伝子を推定し分子時計から偽遺伝子になった時期推定による巨大ウイルス挿入時期を推定する。このように、多角的にウイルス全ゲノム挿入の時期を推定することでより精度の高い時期推定を行う。次に、共生クロレラと非共生クロレラの種分化時期推定を行う。共生クロレラと非共生クロレラの系統解析に、分岐年代が立証されている他の緑藻をアウトグループとしていれ、化石情報など分子以外の情報から推定された分岐年代を外挿することで、種分化時期を推定する。さらに、共生開始時期推定を行う。細胞内共生生物の間では遺伝子の水平伝播が見られることが多いので、そのような事例が観察されるかを調査する。近年、多数の藻類においてウイルス配列が見つかっているが、巨大ウイルスの挿入はまだ珍しく進化上どのような役割を果たしたかを解明したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
社会情勢の影響で、出張等が大幅に減ったこと、大学での学生等の雇用が減ったことが原因であるが、次年度はこのような状況も改善されるので研究目的に合わせた使用を計画している。
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