研究課題/領域番号 |
20K21455
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
横川 太一 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究プログラム), 研究員 (00402751)
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研究分担者 |
張 翼 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究プログラム), 研究員 (40795358)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 細菌個体隔離技術 / 細菌個体生態学 / 微生物生態学 |
研究実績の概要 |
本課題では、「細菌個体の生理活性ダイナミクスが、群集レベルでの機能に波及する機構」を明らかにするために、「細菌群集の中の個体(1細胞)の形質」の測定方法の確立を目的に研究を進めている。細菌個体隔離技術として、超微小液滴作製デバイス[フェムトリッター・ドロップレット・アレイ(Femtoliter droplet array, FemDA)]を用いた。これは、1cm角の薄板ガラスに微細加工技術を用いて30fLの容器を100万個整列したものである。FemDAに細菌懸濁液試料を注入すると、各容器(各液滴)に、細菌が1細胞ずつ隔離される。この1細胞ずつ隔離された細菌細胞および液滴を蛍光染色・修飾し、顕微鏡下で観察することにより、細菌群集の中の個体の性状および個体間差を測定できる。 令和2年度は、当初予定のとおり、単離培養株を材料として、FemDAを用いた次の7項目の測定と得られるデータの検証を行った。1)細菌密度、2) 各個体の細胞サイズ、3)各個体の核酸量、4)各個体の特性細胞膜結合型酵素活性、5)群集が生産する細胞外酵素活性、6)各細胞の膜健全性、7)各細胞の増殖速度。さらに、これらの7測定項目を顕微鏡下で適切に観察、撮影、画像解析を行うために、FemDAの構造の改良および最適化も同時に進めている。 また、令和2年度日本海洋学会秋季大会において、「細菌個体隔離デバイスの海洋学への応用」というタイトルで発表を行い、FemDA技術をベースにしたセンサー等の将来的な応用例に関して議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定のとおり、実験工程が進んでいるため。また、派生的に得られたデータやデバイスの機能が新たな研究シーズとして発展する可能性を有するため。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度も当初予定のとおり、FemDAを用いて隔離した細菌細胞の性状測定のための、デバイス改良とデータ検証を進める。単離培養細菌株および環境細菌群集試料を用いて、下記のデータの解析も進める。<単離培養株を使用した細菌個体測定>同種(同一クローン)内での個体の形質のばらつき、同種個体が異なる培養条件下で発現する形質および応答の差異、異種個体が同一培養条件下で発現する形質および応答の差異を測定する。<環境細菌群集試料を使用した細菌個体測定>多種によって構成される環境群集内での個体の性状、異なる環境試料の比較による個体性状の形質および応答の幅を測定する。得られる結果を統合し、細菌個体の生理活性ダイナミクスと群集レベルでの機能の関係性を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
下記2点の理由により次年度使用額が生じた。1)学会、会議等の開催がオンライン化により、旅費の使用がなかったこと。2)実験作業手順の変更により、試薬・消耗品等費が予定よりも少なかったこと。 令和3年度に実施する実験作業(単離培養株・環境細菌群集試料を使用した細菌個体測定)に使用する。
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