研究課題/領域番号 |
20K21456
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
林 悠 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 客員教授 (40525812)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
|
キーワード | 睡眠 / 脳血流 / マウス / うつ病 / リンパ |
研究実績の概要 |
本研究では、我々が見出した睡眠中におこる大脳皮質毛細血管の急激な血流の変化が、どのようなメカニズムによっておこるのか、さらには、どのような生理的な役割を担っているのかの解明を目指している。なお、後者については、特に、脈管系(血管系およびリンパ系)にどのような作用を及ぼすのか、という観点から取り組んでいる。まず本年度は、主に大脳皮質の血流変動メカニズムに関して研究を進めてきた。これまでに、睡眠中の大脳皮質血流の急激な変動が特定のGタンパク質共役型受容体遺伝子のノックアウトマウスでは起こらないことを発見した。さらに、このGタンパク質共役型受容体に対するアゴニストを用いた薬理学的実験では、アゴニスト投与直後に脳血流が変化すること、しかも、その作用が上述のノックアウトマウスでは失われていることを見出した。また、断眠によって生じるリバウンド睡眠の際には、皮質血流のさらなる顕著な変動が起こることも判明したが、そのような条件下でも上述のノックアウトマウスでは皮質血流変動が起きないことも見出した。従って、睡眠中に、当該Gタンパク質共役型受容体のリガンド分子の細胞外の濃度が上昇することが、血流変化のトリガーとなっている可能性が高い。さらに、睡眠中の皮質血流の急激な変動が、どういう役割を担うかに関しては、毛細血管の閉塞による血流低下を抑止する可能性を検証するために、まず、閉塞型の毛細血管を検出する手法の確立に取り組んだ。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ当初の予定通り進んでいる。ただ、そもそも交付された時期が、当初の予定よりも大きく遅れたため、今年度中に購入を予定していた一部の物品については、納入が間に合わず、次年度に持ち越しとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
睡眠中の急激な皮質毛細血管の血流変動に関わるGPCRを同定できたことを踏まえて、さらに、どのような細胞外のシグナルが睡眠中の血流変動を引き起こすのかについて解明に取り組む。また、睡眠中の急激な血流変動の生理的役割について、脈管系(血管系およびリンパ系)に及ぼす作用に注目して解明を目指す。具体的には、睡眠中のダイナミックな皮質毛細血管血流の変動が、①毛細血管の閉塞による血流低下を抑止する可能性、および②髄膜リンパ系の循環を促して老廃物除去に貢献する可能性、を検証する。2つ目のリンパ系の循環に関しては、脳脊髄液中に貯まった老廃物が髄膜リンパ管へと排出される流れは、蛍光標識したLyve-1抗体を大槽へ注入することで可視化できるとされることを踏まえ、同手法によって、睡眠の効果を検証する。脳波を測定しながら、蛍光標識Lyve-1抗体を様々なタイミングで注入し、覚醒、ノンレム睡眠およびレム睡眠中の髄膜リンパ管による脳脊髄液排出量を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前述の通り、研究自体はほぼ当初の予定通り進んでいるものの、研究助成金が交付された時期が、当初の予定よりも大幅に遅れたため、今年度中に納入を予定していた一部の物品や受託解析等については、納入が間に合わず、次年度に購入することとなった。
|