研究課題/領域番号 |
20K21472
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金井 求 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (20243264)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | クライオEM / トリプトファン / 金ナノ粒子 / 生体共役反応 |
研究実績の概要 |
「見えないものを見えるようにする」分析技術の進歩は、広く科学の変革を引き起こす。特定の生体分子の三次元的位置と量を、細胞内小器官や細胞において分解能高く定量的に観測する分析技術は、対象となる生体分子の機能解明や制御をおこなうための極めて重要な情報を与える。本研究では、クライオ電子顕微鏡(EM)観測において高精度のプローブとなる、抗体と金ナノ粒子を均質性高く結合させる化学技術の開発を目的とする。この基盤技術は、標的とする生体分子を細胞内小器官や細胞の中でクライオEMによって高分解能でかつ定量的に観測することを可能とし、分析科学、生物学、化学、薬学(創薬)、医学などの広い生命科学分野に大きな波及効果をもたらす。 我々の独自技術であるketo-ABNOによるトリプトファン選択的生体共役反応は、タンパク質表面に限定的にしか存在しないトリプトファン残基に対して、温和な条件で様々な低分子を酸化的に結合させることができる。この基盤技術をもちいて、金ナノ粒子を均質に結合した抗体を合成することを目指す。 本年は2種類の方法を試みた。一つは、金ナノ粒子を結合させたketo-ABNOを調製し、これを抗体に結合させる方法である。この方法はペプチドレベルでは成功したものの、抗体に対してはうまく行かなかった。ペプチドレベルの実験でも、金ナノ粒子が存在するとketo-ABNOの反応性が有意に低下することが明らかとなった。そこで、クマリンで保護したチオール部位を持つketo-ABNOを合成し、これを抗体に結合させた後に光照射によってチオールを脱保護し、生じるチオールを用いて金ナノ粒子と結合させる二段階法を試みた。その結果、低収率ながらも金ナノ粒子と結合した抗体が生成することを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二種類の方法を用いて、タンパク質と金ナノ粒子という相反する性質を持つ分子同士を結合する予備的な結果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
さらに効率を向上させて、共役体プローブの機能に迫りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染拡大の影響で大学が閉鎖となり、あまり実験が進まなかった。コロナ後に備えてリソースを残し、2020年度の知見を活かして2021年度に集中的に金ナノ粒子のタンパク質結合条件を検討しようと考えている。
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