研究課題
挑戦的研究(萌芽)
膜タンパク質の動作機構の解明には、核磁気共鳴(NMR)法による動的構造の解析が有効である。しかしながら、多くの膜タンパク質の発現に必須な哺乳細胞発現系での安定同位体標識がボトルネックとなり、これまで膜タンパク質のNMR解析は進んでいなかった。本研究では、哺乳細胞発現系において、メチオニンメチル基を選択的に13C標識し、その周囲のアミノ酸残基を70%以上の高効率で重水素標識する方法を新規に開発した。これにより、膜タンパク質の高感度NMR解析による、動作機構の解明が可能な基盤が確立できた。
構造生物学
本手法を、様々な創薬標的膜タンパク質に適用することで、NMR法を用いた動的構造解析が飛躍的に進展し、膜タンパク質の動作する様を精緻に描写することが可能になる。従来の創薬研究では、静的な高分解能構造にもとづき、標的タンパク質に高い親和性で結合する化合物の創製が主流であった。一方、NMR法を用いた動的構造解析が進展すれば、動的構造にもとづき、望ましい活性を有する化合物を戦略的に設計するなど、新たな創薬戦略が期待できる。