研究課題
妊娠高血圧症候群(HDP)患者の血漿では、昇圧ペプチドangiotensin II (Ang II)の加水分解を担うaminopeptidase A (APA)活性が低い。本研究は、遺伝子組換えヒトAPAを作製し、その体内動態と薬理活性の解明を目的とした。今年度はAPAの体内動態改善を目指し、APAのFc融合タンパク質を作製するとともに、APAとFcとをつなぐリンカー部位の最適化を試みた。ヒトAPAのN末端に存在する細胞内および膜貫通領域を除いた配列を、各種リンカー配列(X)を介してFcタンパク質とfusionさせた組換え融合タンパク質rhAPA-X-Fcを哺乳類細胞に発現させ、培養上清からアフィニティークロマトを用いて精製した。精製したrhAPA-X-Fcの酵素活性を、基質であるGlu-MCAが加水分解して生じたMCAの蛍光強度で評価したところ、リンカー配列を挿入することで、タンパク質および酵素活性収量が向上した。さらに、Ang II添加後のAng III生成速度をLC-MS/MSで定量することにより酵素活性を評価したところ、加水分解活性は最大で約8倍向上し、リンカー導入によるAPA活性向上が示された。Ang IIのマウス腹腔内投与で上昇後の収縮期血圧を測定することにより降圧効果を調べたところ、rhAPA-X-Fc の投与は、リンカーのないAPA-Fc投与よりも顕著な降圧作用を示した。マウスにrhAPA-X-Fcを静脈内投与後の血漿中濃度推移をGlu-MCA加水分解活性から評価したところ、rhAPA-X-FcはAPA-Fcよりも血漿中濃度下面積が大きかった。以上より、リンカー配列の最適化によってrhAPA-Fcの酵素活性や体内動態特性の向上が期待できること、これら2つの向上によってin vivoでの降圧作用がrhAPA-Fcよりも顕著であることが示唆された。
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Placenta
巻: 121 ページ: 32-39
10.1016/j.placenta.2022.02.016.