研究実績の概要 |
自閉スペクトラム症を初めとする精神発達障害の発症において、遺伝的要因が強く影響することが疫学的に示されてきた。近年のゲノム解析技術により、精神障害の発症に関連する遺伝子変異や染色体異常が同定された。しかし、見出されたゲノム変異により生じる病態の解明には至っていない。今後、精神障害に対する治療法・診断法開発や創薬へと繋げるためには、分子病態および神経回路異常の解明が喫緊の課題である。そこで本研究課題では、精神疾患の病態発症機序となる分子・神経回路異常を明らかにする目的で、霊長類のマーモセットを用いてin vitroおよびin vivoの病態モデルの作製を目指す。具体的には、(i) 神経細胞の標的ゲノム部位に外来遺伝子を挿入可能なゲノム編集技術の開発、(ii) マーモセット胚性幹細胞(ES細胞)由来複合オルガノイドによる領野間神経回路再構成法の開発を目指す。 (i) 成体マウス脳を構成する非分裂細胞である神経細胞にてゲノム標的配列に自由に外来遺伝子を挿入可能なゲノム編集技術を確立するために、CRISPR/Cas9システムを搭載したアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を構築した。標的配列を特異的に認識・切断するために、複数のgRNAをデザインし、T7E1 assayにより最適なgRNAを見出した。標的遺伝子座にGFPをノックインするために、AAVを成体マウスの第一次視覚野に微量注入し、GFPの発現を検証した。 (ii) マーモセットES細胞から大脳皮質オルガノイドを誘導する。まずES細胞から外胚葉への誘導するための浮遊培養条件を最適化した。神経分化の指標であるSox1の発現およびロゼッタ構造の形成、さらには大脳皮質への分化誘導の指標であるFoxG1, Pax6, bIII-tubulinなどの発現が認められた。
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