【目的】物理化学(代表者)と薬剤学(分担者・協力者)の融合による光誘起崩壊リポソーム:Light-induced Disruption of Liposomes(LiDL)の開発と、それに基づく新奇薬物送達手法の確立すること。【背景】狙った時間と場所に薬物を届け・働かせることは、薬学における大きな『夢』である。【計画】光受容タンパク質・ロドプシンとpH感受性ポリマーおよび任意の化合物(薬物)を内封させたリポソームを開発することで、時空間制御性に優れた『光』により、狙った 時間・場所で薬物を放出させる新奇手法を確立する。【意義】薬学における『夢』の一つを叶える手法となり、大きな波及効果をもたらす。
具体的なコンセプトは、以下の通りである。光受容タンパク質「(1) ロドプシン(H+ポンプ・チャネル)」と「(2) pH 感受性ポリマー」を含む「(3) リポソーム」を作成する。その際、「(4)蛍光分子カルセインまたはmRNA (eGFPをコード)」を内封させる。このリポソームに「(5) 光」を照射すると、ロドプシンが活性化され、リポソーム内外のpH が大きく(> 5 ユニット)変化する。これにより、pH 感受性ポリマーの物理的形状が変化し、リポソームが崩壊し、化合物が「(6) 放出」される。本研究では、このコンセプトにしたがい、ロドプシンを組み込んだリポソームの作成と、光によるpH変化を定量的に測定し、ロドプシン組み込みリポソームが狙い通りに機能することを明らかにした。さらに、このリポソームにpH感受性分子を組み込むとともに、光により崩壊し、内部分子を放出することをin vitroおよびin cellで確認した。LiDL と命名たした本手法は、時空間分解能に優れた「光」により薬物を放出させるという、新奇かつ独創性・汎用性の高い薬物送達(DDS)手法になるものと期待される。
|