本研究の成果により、細胞のがん化における時計遺伝子の新たな機能的役割が明らかになった。すなわち、時計遺伝子の発現や機能が低下した細胞が形質転換すると、抗がん剤に対しても高い抵抗性を示す悪性度の高いがん幹様細胞が生じ易くなることが判明した。また、この機序として時計遺伝子によってヒストンのアセチル化状態の変化やmiRNAの発現変容が関与することが示唆された。時計遺伝子の発現回復は、がん細胞の浸潤・転移能を低下させたと伴に、その制御下にある因子の機能を阻害すると抗がん剤耐性能も改善したことから、概日時計機構を標的とすることは悪性度の高いがん細胞に対する治療戦略のひとつになる可能性が示唆された。
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