抗生物質をはじめとする抗菌薬に耐性を示す病原菌の蔓延が世界的な問題となっており、感染症に対する新規治療法の立案が早急な課題となっている。自然免疫の1つであるインフラマソーム応答が黄色ブドウ球菌やリステリアなどの感染病態を悪化させることをわれわれは見出した。そこで本研究では、インフラマソーム応答を阻害することで感染病態を改善できないか検討を行った。 インフラマソームが活性化するとカスパーゼ1の活性化を介してIL-1 betaおよびIL-18の産生が誘導される。そこで、IL-1 betaもしくはIL-18を欠損するマウスにメチシリン耐性黄色ブドウ球菌を感染させたところ、どちらの遺伝子改変マウスにおいても野生型マウスと比較して臓器内菌数が低下した。このことから、サイトカイン産生を抑制するのではなく上流のインフラマソーム形成を阻害する方が効果的であると判断した。インフラマソームの形成には細胞内受容体とカスパーゼ1に加えて、アダプター分子ASCが必要となる。特にインフラマソームの活性化にはASCの凝集化が重要であることから、ASCの凝集化を阻害する化合物を設計しリポフェクションでマクロファージ内に導入した。その結果、リガンド刺激によるIL-1 beta産生を抑制できたことから、インフラマソーム応答の抑制効果が観察された。さらに膜透過性を向上させ、小分子化することが可能となった。以上の結果から、ASCを含むインフラマソーム応答の阻害は新たな感染治療の標的になりうることが示唆された。
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