研究課題
本課題遂行期間(3年間)の研究成果について、最終年度の成果も合わせて以下にまとめる。味細胞での発現が知られている苦味受容体の発現をヒト皮膚細胞(ケラチノサイトやHaCaT細胞株)やヒトがん細胞(ヒトガン細胞株10種類)でも認めた(25種類の当該遺伝子すべて)。この受容体は形質膜ではなく小胞体に局在することを蛍光免疫染色で明らかにし、G12/13型のGタンパク質と共役することをレポーターアッセイで確認した。細胞内に苦味物質、あるいは、抗がん剤が侵入した場合、この受容体で感知され、ABC-B1の活性化による排出機構の亢進で有害作用を示す細胞内侵入物を細胞外へと排除すると推察している。ちなみに、皮膚系細胞やヒトがん細胞株を苦味物質で刺激するとABC-B1の発現が上昇する事はRT-PCRやウエスタンブロット解析で確認している。この苦味受容体を介する情報伝達機構としては、G12/13→p38 MAPK→Rho/ROCK→NF-kB→ABC-B1発現上昇の経路でシグナルが伝わっていることを明らかにした。抗がん剤耐性との関連を調べるため、苦味物質である0.5 mMデナトニウム存在下で1カ月以上培養したヒト乳がん細胞株、MCF-7細胞を調整し、この細胞株の抗がん剤(40 nMドキソルビシン)耐性能(増殖試験)を苦味物質に晒していない親株と比較した。その結果、デナトニウム長期曝露MCF-7細胞は親株と比較して有意にドキソルビシン耐性となっていることを確認した。がん細胞株を苦味物質に長期間晒すことで抗がん剤耐性になる現象は他のがん細胞株、例えばヒト肺がん細胞株、A546細胞でも認められた。現在、この抗がん剤耐性化を獲得した細胞でどのような変化が起こっているのか、MAPキナーゼ群の活性化に焦点を当てて解析中である。すでにERK1/2の恒常的活性化を示唆する結果を得ている。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件)
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