研究課題/領域番号 |
20K21494
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
竹内 恒 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (20581284)
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研究分担者 |
徳永 裕二 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (80713354)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 中分子 / 膜透過 / NMR / 創薬基盤技術 |
研究実績の概要 |
本研究は、中分子に特有の課題である細胞膜透過性の評価および膜透過活性の付与に挑戦し、その活用を推進するNMR基盤技術を構築することで、中分子の活用が拓く新たな生物学的・創薬科学的な革新を誘起することを目的とする。本年度は、抗がん活性を発揮するRas阻害ペプチドCyclorasin群について、細胞透過活性の異なる5種の細胞透過性と立体構造の関連を解析した。Cyclorasin群は非天然アミノ酸を含む配列類似性の高い環状ペプチドであり、細胞透過性ペプチドモチーフ(CPPモチーフ)を共有するものの、細胞透過活性がペプチドごとに大きく異なる。そこで、NMRを用いて、水中および膜表面模倣環境(DMSO中)での立体構造を決定した。その結果、膜透過活性を示すペプチドに共通して、水中からDMSO中でその立体構造が大きく転換すること、またその際に、疎水性残基がクラスターを形成し、その周囲に塩基性残基が配置される両親媒構造が形成されることを見出した。一方、細胞透過性の低いペプチドは、側鎖同士の立体構造的障害により両親媒構造の形成ができないことが明らかとなり、膜表面での両親媒構造への転換が細胞透過活性に重要であることが示された。この傾向は今回構造決定しなかったものも含め14種のcyclorasinペプチドについても同様であり、一般化が可能であった (Takeuchi et al., Angew. Chem. Int. Ed. (2021))。本成果は、細胞透過活性をもつ中分子の設計に有効である。また、膜透過活性の測定が、中分子においては必ずしも容易でないことを鑑み、in cell NMRにより中分子の膜透過をリアルタイムで評価する手法の確立を目指した研究に着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、中分子に特有の課題である細胞膜透過性の評価および膜透過活性の付与を目指すものであるが、本年度の研究成果により、膜透過活性を示すペプチドが持つ共通した構造的特徴が明らかになるとともに、ペプチドの透過性を低下させる要因も明らかにしたことから、細胞透過活性をもつ中分子の設計に有効である。また、今成果についてはAngew. Chem. Int. Ed. に代表者を筆頭、CAとして発表したことから十分な成果が挙がった後判断した。
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今後の研究の推進方策 |
膜透過活性の測定が、中分子においては必ずしも容易でないことを鑑み、in cell NMRにより中分子の膜透過をリアルタイムで評価する手法の確立を目指した研究に着手していることから、本年度中の成果の取得と発表を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はコロナ禍に関わるテレワークの推進などもあって消耗品費および補助員費の使用が抑えられた結果、次年度使用額が生じた。今年度は、本次年度使用額を活用し、補助員1名を雇用し、研究の推進を加速する予定である。また当初予定されていた消耗品などへの支出がその際に併せて必要となる。
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