研究課題
24時間周期の社会生活を健全に営む上で、内因性周期が24時間からずれている中枢体内時計をきっちりと外界の昼夜サイクルに同調させること(光同調)が極めて重要である。中枢体内時計・視交叉上核(SCN)はcoreとshellの領域に分けられ、前者は網膜から伝わる光情報の入力部、後者は概日リズムを発振する主要な振動部と言える 。coreの光に対する応答については研究が進んでいる。しかし光同調の成立にはshellでも概日リズム位相がシフトして固定される必要があるが、この過程の研究はほぼ皆無である 。Shell(AVPニューロン)特異的Nalcn(Na+リークチャネル)欠損マウスは光同調能が劇的に変化していることを発見したので、このマウスをモデルとして用い、中枢体内時計全体を包括した光同調メカニズムの解明を目指す。本年度は、AVPニューロン特異的Nalcn欠損マウスの光刺激に対する位相反応曲線を作成した。興味深いことに、大きな雌雄差が観察された。また、gain of function型の変異Nalcn をAVPニューロン特異的に発現するマウスを作成し解析したが、その概日行動リズムに大きな異常は観察されなかった。AVPニューロン特異的Nalcn欠損マウスとPer2::Lucレポーターマウスを交配し、SCN explantの発光イメージングによる解析を開始した。またtdTomatoレポーターマウスと交配したマウスを作成し、SCNスライスの電気生理学的解析も開始した。さらに、ファイバーフォトメトリーと蛍光Ca2+センサーjGCaMP7sを用い、AVPニューロン特異的Nalcn欠損マウスのAVPニューロン、VIPニューロンにおける[Ca2+]iリズムを生体内で計測する実験の準備を行っている。
2: おおむね順調に進展している
ほぼ研究計画の通りに、研究が進んでいる。
AVPニューロン特異的Nalcn欠損マウスの光同調能異常の雌雄差について、その原因を解析する。AVPニューロン特異的Nalcn欠損マウスとPer2::Lucレポーターマウスを交配したマウスを用い、SCN explantの発光イメージングによる解析を行う。またtdTomatoレポーターマウスと交配したマウスを用い、SCNスライスの電気生理学的解析を行う。さらに、AVPニューロン特異的Nalcn欠損マウスのAVPニューロン、あるいはVIPニューロンに蛍光Ca2+センサーjGCaMP7sを発現させ、ファイバーフォトメトリーを用いてこれらのニューロンにおける[Ca2+]iリズムを生体内で計測する。特に光刺激した時の両ニューロンの応答が、AVPニューロン特異的Nalcn欠損マウスにおいてどのように変化しているかに着目する。
SCNスライスの電気生理学的解析に用いるマウスの作成がやや遅れ次年度に持ち越しになったため。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Proc Natl Acad Sci U S A
巻: 118 ページ: e2010168118
10.1073/pnas.2010168118
Mol Metab
巻: 49 ページ: Epub
10.1016/j.molmet.2021.101202
脳と神経
巻: 72 ページ: 1143-1150
10.11477/mf.1416201667