研究課題/領域番号 |
20K21499
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
山岸 覚 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (40372362)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | Noggin / 骨形成因子 / 脳梁形成 / ミクログリア |
研究実績の概要 |
脳梁はヒトの脳における最大の交連繊維であり、左右の大脳半球を繋ぎ、感覚や言語における情報交換を行っている。発生過程における脳梁形成は、妊娠後期において、大脳皮質神経細胞が皮質板表層へと移動した後に行われる。脳梁が正中交叉を行う際には、正中部に発現している誘引因子であるネトリンに向かって軸索伸長する(Serafini et al., Cell, 1996)。申請者は偶然にも、Csf1r-iCreによってミクログリア特異的に骨形成因子(BMP)阻害分子であるNogginを欠損させると脳梁欠損が見られ、ネトリンノックアウトマウスと同様のフェノタイプが生じることを見出した。 したがって、本研究課題では、分泌因子であるNogginと脳梁形成の関係について解析を実施している。NogginのCsf1r-iCreコンディショナルノックアウトマウスを多数作成し解析したところ、脳梁欠損が見られる個体と、そうでない個体がいることが明らかとなった。さらには、マイルドなフェノタイプとして、脳梁の前後の距離が短い個体も得られた。また、さらに興味深いことに、神経系で組み換わるNestin-Creマウスでも同様のフェノタイプが見られた。Nestin-Creを用いたコンディショナルノックアウトマウスは胎生致死になることが大多数であるが、生後も得られることがあり、これの半数近くは脳梁欠損フェノタイプが見られた。また、実際、Nogginプロモーター下でGFPを発現するNoggin-GFPを用いて発現を観察すると、脳梁形成期の神経細胞で強く発現していることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述した通り、複数のNogginコンディショナルノックアウトマウスで脳梁欠損フェノタイプを観察することができた。すなわち、Nogginによる正中交差誘導活性を裏付けることができたことに加え、ミクログリアもしくは神経細胞から分泌されたNogginは、お互い補完している可能性が考えられる。また、Noggin-GFPを用いた発現解析から発生過程におけるNoggin陽性細胞のポピュレーションが明らかとなってきた。 また、Noggin結合因子の同定に向け、プラスミドにNogginをクローニングし、リコンビナントの発現を確認した(下記参照)。
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今後の研究の推進方策 |
Nogginの神経軸索誘導因子活性は今まで知られていないことから、Nogginと結合する因子を探索し、そのシグナルカスケードを明らかにする。スクリーニングの方法としては、質量分析を用いたショットガン解析を予定している。すなわち、Fcタグを付したNogginリコンビナントタンパク質を精製し、Protein Aカラムに結合させ、脳のライセートからNogginに結合する因子を探索する。現在、Protein Aカラムに結合させるためのFc融合Nogginをベクターにクローニングし、HEK293細胞からのリコンビナントの発現をすでに確認している。今後は、培養スケールをアップし収量を増やし、Protein Aカラムに結合させてエリューションし、結合因子の同定を実施する。なお、対照実験としては、Fc部位のみのベクターから同様にリコンビナントを回収して実験を行う。 また、引き続きNogginlx/lx; Csf1r-iCre及び、Nogginlx/lx; Nestin-Creコンディショナルノックアウトマウスのフェノタイプの解析や、Noggin-GFPマウスを用いた組織学的な解析を実施していく予定である。特に、脳梁形成をガイドするグリア細胞の集積(glial wedge, indusium griseum,subcallosal sling )が正常に行われているか解析をしていく。さらには、Nestin-CreとCsf1r-iCreの両方を併せ持つダブルCreマウスを作成し、脳梁欠損マウスの得られる可能性が上昇するかを解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、出張することがなくなり、旅費の出費がなくなった。また、実験補助員の労働が密にならないよう制限したもらったため、人件費・謝金の支出が減少した。 一方、外部資金を獲得することができ、本プロジェクトと共通している試薬(蛍光2次抗体など)を購入する必要性がなくなったため。
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