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2020 年度 実施状況報告書

生殖細胞関連遺伝子変異の探索と疾患モデル動物の作製

研究課題

研究課題/領域番号 20K21504
研究機関熊本大学

研究代表者

石黒 啓一郎  熊本大学, 発生医学研究所, 教授 (30508114)

研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2022-03-31
キーワード減数分裂 / 不妊 / 卵巣
研究実績の概要

研究代表者は減数分裂の開始に決定的な役割を担う新規の生殖細胞特異的因子MEIOSIS initiator (MEIOSIN)を同定した。MEIOSINはSTRA8と複合体を形成して減数第一分裂の進行に関連する多くの遺伝子のプロモーターに結合する転写因子として働くが、これによって直接制御される標的遺伝子にはhypothetical gene (ゲノムデータベース上にIDのみが付与されている機能不明遺伝子)が含まれることが判明している。これらの未解析の遺伝子には、減数分裂の進行に必要とされる未知のものが含まれる可能性がある。とりわけMeiosin遺伝子欠損マウスの成体卵巣の表現型は、ヒトのPOIと酷似することから、Meiosin遺伝子それ自身或いはMEIOSINによって制御される下流の遺伝子が原因となっている可能性が考えられた。本研究ではヒト原発性卵巣不全患者における減数分裂関連因子異常の探索と疾患モデルマウスでの検証を目的として研究を行った。初経を迎えるべき年齢ですでに卵巣内の卵胞が枯渇し、卵巣性無月経を呈する場合がある。POI症状に適合した患者の末梢血DNAの全ゲノムのエキソーム解析を実施した。得られたDNA配列情報は、ヒトゲノム配列データベースとの比較により、既知の減数分裂関連遺伝子とMEIOSINの転写制御下にある約300の遺伝子群に絞って照合を行い、(1)タンパク質をコードする配列に変異が見られないか、(2)スプライシングに影響を与える配列に変異が見られないか、(3)遺伝子発現に影響を与えるプロモーター周辺に変異がないか、について検討した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当グループにおいて先行して行われた解析結果から、1例のPOI患者において、Meiosin遺伝子にバリアント(Lys103→Gly)アリルを持つものが見つかっていた。MEIOSINとSTRA8はHLHドメインを介してヘテロダイマーを形成することが判明しているが、Lys103残基はMEIOSINタンパク質HLHドメインのSTRA8との相互作用の界面に位置することが立体構造モデリングにより予想されることから、Lys103→Gly変異型変異について、全ゲノムのエキソーム解析データに注視したがおそらくSNPであることが推定された。これ以外に、先行5例からは注目する遺伝子に既知のSNP以外の変異は見つかっていない。

今後の研究の推進方策

MEIOSINはSTRA8と複合体を形成して減数第一分裂の進行に関連する多くの遺伝子のプロモーターに結合する転写因子として働くが、これによって直接制御される標的遺伝子には未解析のhypothetical gene (ゲノムデータベース上にIDのみが付与されている機能不明遺伝子)が含まれることが判明している。これらの未解析の遺伝子には、減数分裂の進行に必要とされる未知のものが含まれる可能性がある。またMEIOSINの転写制御下に置かれている遺伝子であることからヒトの原発性卵巣不全の原因遺伝子として見つかる可能性が期待される。引き続きPOI患者サンプルの収集と全ゲノムのエキソーム解析を実施する。個人ごとのSNPによる違いと真の変異とを区別する必要があるため、患者側に変異の候補が同定された場合にはマウスゲノムの対応箇所にCrispr-Cas9ゲノム編集法により同等の変異を導入して、疾患モデルマウス変異体の卵巣における表現型を解析する。

  • 研究成果

    (19件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 図書 (6件) 備考 (2件)

  • [国際共同研究] University of Gothenburg(スウェーデン)

    • 国名
      スウェーデン
    • 外国機関名
      University of Gothenburg
  • [雑誌論文] Meiotic cohesins mediate initial loading of HORMAD1 to the chromosomes and coordinate SC formation during meiotic prophase2020

    • 著者名/発表者名
      Fujiwara Yasuhiro、Horisawa-Takada Yuki、Inoue Erina、Tani Naoki、Shibuya Hiroki、Fujimura Sayoko、Kariyazono Ryo、Sakata Toyonori、Ohta Kunihiro、Araki Kimi、Okada Yuki、Ishiguro Kei-ichiro
    • 雑誌名

      PLOS Genetics

      巻: 16 ページ: e1009048

    • DOI

      10.1371/journal.pgen.1009048

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Phosphorylation of the Anaphase Promoting Complex activator FZR1/CDH1 is required for Meiosis II entry in mouse male germ cell2020

    • 著者名/発表者名
      Tanno Nobuhiro、Kuninaka Shinji、Fujimura Sayoko、Takemoto Kazumasa、Okamura Kaho、Takeda Naoki、Araki Kimi、Araki Masatake、Saya Hideyuki、Ishiguro Kei-ichiro
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 10 ページ: 10094

    • DOI

      10.1038/s41598-020-67116-0

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 生殖細胞特異的ZFP541複合体は減数分裂前期脱出の転写制御に働く2021

    • 著者名/発表者名
      高田幸, 小寺千聡, 竹本一政, 坂下陽彦, 前田亮, 島田龍輝, 立花 誠, 行川 賢, 荒木喜美, 石黒啓一郎
    • 学会等名
      日本エピジェネティクス研究会年会
  • [学会発表] 生殖細胞における体細胞分裂から減数分裂への切り替え機構と性差2020

    • 著者名/発表者名
      石黒啓一郎
    • 学会等名
      第126回日本解剖学会総会
    • 招待講演
  • [学会発表] 胎児期メス生殖細胞における減数分裂開始と細胞周期G1/S期の同調のメカニズム2020

    • 著者名/発表者名
      島田龍輝, 石黑 啓一郎
    • 学会等名
      第 38 回 染色体ワークショップ 第 19 回 核ダイナミクス研究会
  • [学会発表] 減数分裂開始に必須の役割を果たすMEIOSINおよび STRA8のタンパク質ドメイン2020

    • 著者名/発表者名
      石黒 啓一郎
    • 学会等名
      第43回 日本分子生物学会年会
    • 招待講演
  • [学会発表] MEIOSINによる減数分裂のコントロール2020

    • 著者名/発表者名
      石黒 啓一郎
    • 学会等名
      第65回日本生殖医学会学術講演会・総会 教育講演
    • 招待講演
  • [学会発表] SWITCHING FROM MITOSIS TO MEIOSIS IS REGULATED BY SEXUALLY DIFFERENT MECHANISM IN MAMMALIAN GERM CELLS2020

    • 著者名/発表者名
      Kei-ichiro Ishiguro
    • 学会等名
      Cold Spring Harbor Laboratory Meeting 2020 GERM CELLS
    • 国際学会
  • [学会発表] MEIOSIN directs the switch from mitosis to meiosis in mammalian germ cells2020

    • 著者名/発表者名
      Kei-ichiro Ishiguro
    • 学会等名
      53rd Annual Meeting of JSDB (Online meeting)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 減数分裂を制御する新規因子KCTD19を欠損した雄マウスは無精子症を呈し不妊となる2020

    • 著者名/発表者名
      小寺千聡, 高田幸, 大場隆, 石黒啓一郎, 片渕秀隆
    • 学会等名
      日本人類遺伝学会第65回大会
  • [図書] マウス・ラットモデル作製・解析プロフェッショナル モデル動物の作製-体細胞分裂と減数分裂の違いを生み出す分子機構の解明2021

    • 著者名/発表者名
      石黒啓一郎 (分担) 先端モデル動物支援プラットフォーム(AdAMS)
    • 総ページ数
      320
    • 出版者
      羊土社
    • ISBN
      9784758121125
  • [図書] BIO Clinica 2021年 2月号 不妊診療UPDATE 減数分裂開始因子MEIOSINとその標的遺伝子の変異による不妊2021

    • 著者名/発表者名
      石黒啓一郎
    • 総ページ数
      94
    • 出版者
      北隆館
  • [図書] 週刊医学のあゆみ 275(7)2020

    • 著者名/発表者名
      石黒啓一郎
    • 総ページ数
      2
    • 出版者
      医歯薬出版社
  • [図書] 「細 胞」8月号 特集「非ゲノム情報の複製機構 体細胞分裂から減数分裂へのスイッチ機構2020

    • 著者名/発表者名
      石黒啓一郎
    • 総ページ数
      7
    • 出版者
      ニューサイエンス社
  • [図書] 「細胞」5月増刊号 体細胞分裂と減数分裂における染色体・クロマチン構造の違い2020

    • 著者名/発表者名
      石黒啓一郎
    • 総ページ数
      7
    • 出版者
      ニューサイエンス社
  • [図書] 実験医学4月号  カレントトピックス 生殖細胞の運命決定 ― 体細胞分裂から減数分裂への細胞周期の切替え2020

    • 著者名/発表者名
      石黒 啓一郎
    • 総ページ数
      5
    • 出版者
      羊土社
  • [備考] researchmap

    • URL

      https://researchmap.jp/read0123107

  • [備考] 熊本大学発生医学研究所

    • URL

      http://www.imeg.kumamoto-u.ac.jp/bunya_top/chromosome-biology/ronbun/

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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