研究課題/領域番号 |
20K21506
|
研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
大野 伸彦 自治医科大学, 医学部, 教授 (10432155)
|
研究分担者 |
黒尾 誠 自治医科大学, 医学部, 教授 (10716864)
原 徹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 技術開発・共用部門, ステーション長 (70238161)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
|
キーワード | リン酸カルシウム / エネルギー分散型X線分析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、試料の元素組成情報を得る目的で活発に用いられているエネルギー分散型X線分析(EDX)による元素マッピングに走査型電子顕微鏡(SEM)による3次元構造解析と関連技術開発を組み合わせ、生体内元素成分の立体的分布を正確にとらえる技術を開発し、高リン負荷状態下を中心とした生体腎臓内のリン酸カルシウム(CaPi)形成過程の可視化に応用することである。 R2年度は、明らかなCaPi結晶の形成が認められる高リン食を長期間負荷したマウスの腎組織を用いて試料作製法を検討し、SEMとEDXによる元素観察によるCaPiの組織内観察に適した方法の開発を目指した。その結果、微細構造が良好に保たれ、CaPiを組織内で観察できる手法を開発できた。一方、生物試料の電子顕微鏡観察に広く用いられている金属染色が、CaPiの安定性に影響を及ぼすことも明らかになり、感度の低下につながる可能性が懸念された。これを克服するため、染色方法と観察方法の修正を試みている。新型コロナウイルス感染症の蔓延の影響から、実験の工程の一部、特に一部の検出手法の検討については計画に遅延が発生し、次年度にかけて行う方針とした。 R3年度に向けて試料作製方法や検出方法の細部の検討を完了するとともに、より軽度なCaPiの形成が起こる可能性のある短期間の高リン食負荷マウスを用いて、導電性樹脂の応用の可能性も考えながら、低濃度のCaPi検出のための手法の開発を完了する。そして3次元構造解析を行いながら、腎組織におけるCaPi形成の実体について明らかにすることを目指す。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
試料作製方法の検討の一部は今後行う予定であるが、長期間高リン食を投与した動物の組織を用いたCaPiの検出は進み、組織構築と同時にCaPiを検出することにも成功しており、短期間の高リン食投与動物における微量のCaPi検出も開始しつつあるため。
|
今後の研究の推進方策 |
R2年度に開発した手法の細部の条件検討を終了するとともに、相関観察の高解像度化を目指した樹脂開発を行う。固定、導電染色を行った試料をこの新規樹脂に包埋し、SBF-SEMによるチャージ抑制効果を確認するとともに、連続電顕画像-元素マッピング像を取得しCaPi形成に関わるオルガネラの微細構造について、さらに詳細に観察を行う。より軽度なCaPiの形成が起こる可能性のある短期間の高リン食負荷マウスを用いて、低濃度のCaPi検出のための手法の開発と3次元構造解析も行いながら、腎組織におけるCaPi形成の実体について明らかにすることを目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の蔓延があり、検出手法の検討の細部についての年度内の完了が困難となったため。
|