研究課題
本研究の目的は、試料の元素組成情報を得る目的で活発に用いられているエネルギー分散型X線分析(EDX)による元素マッピングに走査型電子顕微鏡(SEM)による3次元構造解析と関連技術開発を組み合わせ、生体内元素成分の立体的分布を正確にとらえる技術を開発し、高リン負荷状態下を中心とした生体腎臓内のリン酸カルシウム粒子(CaPi)形成過程の可視化に応用することである。まずは明らかなCaPi結晶の形成が認められる高リン食を長期間負荷したマウスの腎組織を用いて試料作製法を検討し、SEMとEDXによる元素観察によるCaPiの組織内観察に適した方法を開発した。この過程で、生物試料の電子顕微鏡観察に広く用いられている金属染色が、CaPiの安定性に影響を及ぼすことも明らかになった。そこで高圧凍結-凍結置換固定を用いることに加えて構造観察のための電子染色を極力低減し、代わりに走査型電子顕微鏡における高感度検出器を用いたblock-face imagingを応用することで、CaPiを組織内に保ったまま、3次元開発にも応用可能と考えられる微細形態観察技術を確立した。さらに蛍光プローブを用いた光電子相関顕微鏡観察により、軽度なCaPiの形成が起こる可能性のある短期間の高リン食負荷マウスにおいても、CaPiを検出可能な手法を開発した。この技術を応用し、皮質髄質境界部の近位尿細管内部においてCaPiの微細な粒子が形成されること、また粒子の成長過程にカルシウム以外の金属が関与する可能性を見出した。
2: おおむね順調に進展している
微細なリン酸カルシウム粒子の検出技術を開発し、高リン食負荷の過程における粒子の形成過程の可視化が可能となった。また、生体の尿細管内における粒子形成の関連因子についての知見も得られつつあるため。
これまでに得られた結果の一部は既に論文として発表したが、さらに残りの一部についても、成果発表を行う予定である。
補助事業の目的をより精緻に達成するための研究の実施(追加(再現)実験の実施や学会参加、論文投稿など)が必要となったため。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Journal of Clinical Investigation
巻: 131 ページ: e14569
10.1172/JCI145693