研究課題/領域番号 |
20K21510
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
堀内 浩 生理学研究所, 基盤神経科学研究領域, 特任助教 (60760733)
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研究分担者 |
澤田 和明 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40235461)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | CMOS / イオン / イメージング / pH / 神経活動 |
研究実績の概要 |
本研究では、生きた個体動物に最適化した1 細胞レベル(47.1 um) の高精細・細胞外pHイメージングセンサ(128 x 32 pixels) を1pixel単位でマルチイオン化し、大規模脳領域(3.00mm x 0.75mm) においてすべての細胞外陽イオン(Na+, K+, H+, Ca2+, Mg2+)動態を同時に捉えることが可能なマルチイオンイメージセンサを開発し、生体応用する。 これまでに、インクジェット法を用いて、プロトンセンサ表面に最小2pixel (47.1um幅)で選択的透過性のイオノフォアを帯状に成膜することによって、プロトンセンサをマルチイオンセンサ化することに成功した。これをマウス生体脳に挿入し、薬理学的手法によって神経活動を亢進することで、神経活動に依存した3種類のイオンの細胞外における変化を同時検出することができた。今年度は、レーザー加工機によって感応膜を精密除去することで、30umの空間解像度で複数のイオンを検出することに成功した。今後さらなる成膜方法を検証し、20um以下の精密成膜方法の確立を目指す。 これまでに、本pHセンサを用いて生理的なpH変化の検出に成功している(Horiuchi et al, 2020)。すなわち、一次視覚領域にセンサを挿入し、視覚刺激を介した神経活動に伴って微細な環境でpHが微小変化することを明らかにした。さらに、pHセンサを病態モデル動物に適用することで病態時の生体脳細胞外pHイメージングを行い、病態発現に伴うダイナミックなpH変化を時空間的に捉えることに成功した。今年度は、pHセンサと脳波の同時計測法の最適化を行った。今後、pH変化のメカニズムと病態との関連性について精査する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
レーザー加工技術を用いて、プロトンセンサ表面に30um幅で選択的透過性のイオノフォアをアレイ状に成膜することによって、プロトンセンサをマルチイオンセンサ化することに成功した。今後、マルチイオンセンサを生体に導入し、脳高次機能の発現や病態発現における細胞外のイオン環境の変化を捉える。さらに、同技術に加え、半導体加工技術を駆使し、より精細なイオノフォア成膜(23.55um幅以下)を目指す。 一方、pHセンサのさらなる生体応用として、病態メカニズムへ解明に着手している。すでに、病態発現に伴うダイナミックなpH変化を捉えることに成功しているが、センサ以外のデバイス同時適用によって相互干渉するなど、計測手法を見直す必要が生じた。そのために、今年度は、分子メカニズムの解明や病態との関連性にアプローチできず、やや遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
今後より精細なイオノフォア成膜(23.55um幅以下)を目標とする。レーザー現時点で3種類までの同時計測を達成した。さらに、病態へセンサを適用することで、病態発現に伴うpHのダイナミックな変化を時空間的に捉えることに成功した。さらに空間分解能を向上させるため、レーザー加工技術を導入し、30umまでの空間解像度の向上とアレイ状の成膜を達成できた。次年度は、半導体加工技術を視野に入れつつ、さらなる空間分解能の向上を目指す。pHセンサの生体応用に関しては、各種デバイスとの同時計測のための最適化を行った。今後、病態発現に伴って生じる細胞外環境の変化が、どの細胞、分子、脳領域を起源とするのかといった病態メカニズムやpHと病態との因果関係について検証を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
pHセンサのさらなる生体応用として、病態メカニズムへ解明に着手している。すでに、病態発現に伴うダイナミックなpH変化を捉えることに成功しているが、センサ以外のデバイス同時適用によって相互干渉するなど、計測手法を見直す必要が生じた。そのために、今年度は、分子メカニズムの解明や病態との関連性にアプローチできず、やや遅れが生じた。次年度、今年度執行予定であった分子メカニズムや病態との関連性を明らかにするために、次年度使用額が生じた。
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