研究実績の概要 |
本研究では、生きた個体動物に最適化した1 細胞レベル(47.1 um) の高精細・細胞外pHイメージングセンサ(128 x 32 pixels) を1pixel単位でマルチイオン化し、大規模脳領域(3.00mm x 0.75mm) においてすべての細胞外陽イオン(Na+, K+, H+, Ca2+, Mg2+)動態を同時に捉えることが可能なマルチイオンイメージセンサを開発し、生体応用することを目的とした。本研究では、イオノフォア成膜によってNa+, K+, Ca2+の検出に成功した。最終年度はMg2+の検出にも成功した。今後、各イオンの検出特異性や検出感度をさらに向上させる必要がある。インクジェット法を用いて、プロトンセンサ表面に最小2画素 (47.1um幅)で選択的透過性のイオノフォアを帯状に成膜することによって、プロトンセンサをマルチイオンセンサ化することに成功した。最終年度はレーザー加工によって一画素レベルに相当する20umの精密成膜を達成した。すなわち、一画素レベルで複数のイオンを検出する当初の目標を達成することができた。生体応用に関しては、pHセンサを病態モデル動物に適用することで生体脳細胞外pHイメージングを行い、病態発現に伴うダイナミックなpH変化を時空間的に捉えることに成功した。pH変化の機序を明らかにするために、薬理的手法を用いて特定の細胞活動を制御したところpH変化が消失したことから責任細胞を同定することができた。今後、責任細胞上の様々な分子との関連を明らかにしていくとともに、マルチイオン計測によって、pH変化周辺においてどのようなイオンがどのように変容するかを進める。さらに、イオン変化と病態発現との関連性についても追及する。
|