研究課題
加齢により免疫老化という現象が生じるが、免疫老化の進んだ個体では感染症に対する正常な免疫応答が低下する一方、慢性炎症や自己免疫応答が亢進し、様々なヒト疾患の病態形成に関与すると推定されている。T細胞は加齢によりサブセットが変化し、最も大きな変化の1つが、メモリーT細胞の増加である。本研究では、自己免疫に類似した慢性炎症を惹起するマウスモデル、ヒト検体を用いた研究を推進し、慢性炎症に関連するT細胞の異常や慢性炎症惹起のメカニズムの解明、炎症制御標的候補分子の探索を推進する。本年度は、免疫老化にあたえる酸化ストレスの影響を検討する目的で、ストレス脆弱化マウス Nrf2-/-LMP7-/-マウスにおける慢性炎症惹起細胞の解析を進めた。Nrf2-/-LMP7-/- マウスでは、一般的に加齢により増加すると考えられているCD49d陰性メモリー細胞ではなく、抗原反応性CD49d高発現メモリー細胞が増加すること、Nrf2-/-LMP7-/-では慢性炎症像を多数の臓器に観察することを明らかにした。本結果により、酸化ストレスによる細胞内タンパク質の変化、変性タンパク質の増加が自己抗原の変容を引き起こし、慢性炎症の原因になっている可能性が示唆された。今後は、マウスモデルの解析結果をヒト検体を用いた研究開発に展開する。免疫老化にあたえる酸化ストレスの影響、抗原変容、慢性炎症惹起のメカニズムの解明、炎症制御標的候補分子の同定を進めることで、バイオマーカーや新たな治療法の開発を目指す。
2: おおむね順調に進展している
免疫老化にあたえる酸化ストレスの影響を検討する目的で、ストレス脆弱化マウス Nrf2-/-LMP7-/-マウスにおける慢性炎症惹起細胞の解析を進めた。
今後は、Nrf2-/-LMP7-/-マウスにおける慢性炎症惹起細胞の詳細な解析を進め、サブセット構成の変化を検討する。また、各サブセットをセルソーティングにより分離し、アレイ解析等による炎症惹起細胞の新規細胞マーカー、炎症制御標的候補分子の同定を行う。また、ヒト組織検体を用いた慢性炎症の検索と新規炎症マーカー、関連制御分子の検討を進める。
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