研究実績の概要 |
アフリカツメガエル幼生(オタマジャクシ)は高い器官再生能を持つが、その再生能は成体(カエル)では失われる。研究代表者らはこれまで、ツメガエルの器官再生能を規定する分子的要因に関する研究を実施し、特に、インターロイキン11(Il11)が幼生尾再生に重要な役割を担うことを報告してきた。研究期間全体を通じて得られた研究成果は以下の通りである。(1) 切断された幼生肢芽の形態形成能は発生ステージが進むと低下するが、FGF10投与により部分的に回復する。今回、FGF10投与肢芽のsingle cell RNA-seq解析により、この形態形成能向上に関わる候補細胞集団として新規な線維芽細胞様集団を同定した(Yanagi et al., 2022)。(2) 長鎖1本鎖DNAを用いたCRISPR/cas9法によりツメガエルにおけるノックイン手法を確立し、その効率がコンストラクト顕微注入後の低温処理により向上することを示した(Kato et al., 2021)。(3) ツメガエルIl11受容体α鎖遺伝子が尾再生に重要な役割を担うことを示した(Suzuki et al., 2022)。(4) 哺乳類で薬剤排出能を指標として組織幹細胞を濃縮する方法として知られていたSide population法が、ツメガエル幼生尾再生芽の組織幹細胞の濃縮にも有用であることを示した(Kato et al., 2022)。(5) ツメガエル幼生尾再生に必須なマクロファージ様細胞集団を同定し、その再生促進能を担う新規遺伝子としてregeneration factors expressed on myeloidを同定した(Deguchi et al., 2023)。これらの研究成果はツメガエルにおける新規な実験手法の確立、および器官再生固有な分子機構の一端を解明したもので、再生生物学分野における重要な知見である。
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