研究課題/領域番号 |
20K21518
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
金山 剛士 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (80811223)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 造血 / 感染症 / 炎症 / 炎症制御 / 自然免疫 / B細胞 |
研究実績の概要 |
骨髄は赤血球や血小板、免疫細胞など様々な血液細胞を生み出すことで生命の維持や生体の恒常性に寄与している。一般的に、炎症などの生体ストレス環境下では、組織内に炎症を惹起・亢進する炎症性細胞と、炎症を抑制して組織や細胞へのダメージを防ぐ役割を持つ抑制性の細胞が混在することによって、炎症のバランスを制御している。しかし、骨髄では炎症や感染時に急激に細胞の流出が起こるため、抑制性細胞が骨髄内に留まれない可能性があり、炎症や感染症のような生体ストレス下で骨髄内の恒常性や機能がどのように維持されているのか不明であった。実際に、定常状態のマウス骨髄では代表的な制御性細胞である制御性T細胞や、制御性サイトカインの代表であるIL-10の主要産生細胞である形質細胞が存在しているが、敗血症のような急性感染を誘導するとこれら抑制性の細胞は劇的に減少することが分かった。その代わりに、B細胞においてCD11bとIL-10を発現する特殊なB細胞が分化することを発見した。IL-10のレポーターマウスを用いた解析の結果、B細胞は敗血症誘導後の骨髄において主要なIL-10の産生源であることが分かった。また、この骨髄で誘導されるCD11b陽性B細胞は、過去に報告のあるCD11b発現B細胞と細胞表面マーカーや転写因子の発現が全く異なっていることから新しいB細胞サブセットであることが分かった。また、この細胞は主にPre-B細胞から分化し、骨髄に保持されやすい性質があることも分かった。B細胞の欠損したマウスやB細胞特異的にIL-10を欠損したマウスを用いて、CD11b陽性B細胞の生理学的な役割を検討したところ、これらのマウスでは敗血症誘導後の好中球や単球のようなミエロイド系細胞産生が低下することが分かった。現在、そのメカニズムを検討するとともに、論文として成果公表の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究内容は当初想定していたストーリーとは多少変更があったものの、概ね順調に進んでいる。コロナの影響で動物実験が縮小されたため、進行に遅れが生じたが、1年以内の論文投稿が行えると想定している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、B細胞の欠損やB細胞特異的なIL-10の欠損でミエロイド系細胞産生が低下するメカニズムを明らかにするとともに、CD11b陽性B細胞が骨髄に維持されやすい理由を調べる予定である。また、論文や学会において成果を公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による研究の縮小により、60万円計上していたマウス購入が約半分ですんだこと、日本血液学会等学会出張予定(20万計上)がコロナ禍で大幅な予定変更があった(中止やWeb開催等)ため。2021年度は2020年度に取りやめた実験を行い、本年度コロナで参加できなかった学会等での発表を予定しており、繰越金はこれらの費用に用いる。
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