研究課題/領域番号 |
20K21520
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
田川 陽一 東京工業大学, 生命理工学院, 准教授 (70262079)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | JCウイルス / iPS細胞 / 神経組織 / マイクロ流体デバイス / グリア細胞 / アストロサイト / トロピズム / 感染 |
研究実績の概要 |
流体デバイスを利用して体内循環系を模倣した培養モデルを構築し、腎臓から脳へのJCVのトロピズム変化の再現培養モデルを確立し、トロピズム変化のメカニズムを解明することを目的としている。本研究では、腎組織または内皮細胞でのArchetype JCウイルスの増殖により変異が生じ、PML型となって顕在化するのは、アストロサイトにトラップされるからであると考えている。また、そのトラップは、そのトロピズム変異のモーティブフォースとして、オリゴデンドロサイトの存在があるのではないかと考えている。そこで、2020年度では、①ウイルス感染に対応できる細胞培養マイクロ流体デバイスを開発し、少なくとも二つの培養槽を連結して培地を循環できることを確認した。②本学の研究用微生物規則が策定され、本研究計画が承認された。③ヒトiPS細胞からアストロサイト様細胞への分化誘導法を確立し、遺伝子発現や免疫染色からアストロサイトに分化誘導できたと判断した。そのヒトiPS細胞由来アストロサイトにPML型JCウイルスの感染を試みたところ、感染1週間後に1細胞あたり10万コピーのPML型JCウイルスゲノムが検出され、その後もウイルスの増加が持続していることが確認された。さらに、アストロサイトの携帯に変化が観察され、感染細胞の培地中の乳酸脱水素酵素が非感染細胞よりも有意に高かった。PML型JCウイルスに感染を受けたアストロサイトの細胞死を確認した。さらに、血球凝集反応が陽性であることからも感染が示された。現在、ヒトiPS細胞由来アストロサイトをマイクロ流体デバイス中で培養するための条件を検討している。さらには、ヒトiPS細胞からもう一つのグリア細胞であるオリゴデンドロサイトへの分化誘導を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ヒトiPS細胞からアストロサイト様細胞への分化誘導系を確立し、そのアストロサイトにおいてPML型JCウイルスの感染・増殖も確認できた。本成果の一部は既に速報としてBiochem. Biophys. Res. Commun.に掲載できた。さらには、感染用のマイクロ流体デバイスの作製も作製し、培地の流れまでは確認ができている。
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今後の研究の推進方策 |
ほぼ感染した流体デバイスにまずはCOS細胞を培養し、Archetype JCウイルスの感染実験を行い、デバイス上でのウイルス感染の条件を検討する。その後、デバイスを連結・循環させる。一つのデバイスをCOS細胞、もう一つのデバイスにヒトiPS細胞由来アストロサイトを培養し、共通の培地を検討した後に、Archetype JCウイルスをCOS細胞側に感染した後、循環させて、アストロサイト側に変異ウイルス(PML型)がトラップされることを試みる。さらには、オリゴデンドロサイトのデバイスを連結・循環させることにより、トロピズムの変化の解明を培養実験で証明する予定である。
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