研究課題
2020年度では、ヒトiPS細胞からグリア細胞の一方であるアストロサイトへの分化誘導法を確立し、進行性多巣性白質脳症(PML)型JCウイルスの感染や増殖を確認できた。そこで、2021年度(最終年度)では、このヒトiPS細胞からのアストロサイト分化誘導を神経幹細胞レベルでいったん凍結保存したのちに分化誘導することで、効率良い分化誘導手法を見出すことを検討し、成功した。これまでのJCウイルスの細胞培養の感染では、SV40 T抗原を有した細胞株以外では、ヒト胎児神経芽腫細胞株のみが感染・増殖がかのうであったが、このヒトiPS細胞由来アストロサイトのJCウイルス感染・増殖系では、ヒト胎児神経芽腫細胞株への感染よりもJCウイルスの増殖が良いことも分かったことは大きな成果である。さらに、薬剤によるJCウイルスの感染・増殖の阻害実験を試みたところ、有意に抑えることが可能であったことから新規薬剤のスクリーニングにも役立つことが期待できる。オリゴデンドロサイトの細胞死によるPML発症における本研究の作業仮説であるPML型JCウイルスのアストロサイト感染からオリゴデンドロサイトへの感染と言う2段階感染仮説を実証するために、ヒトiPS細胞からもう一つのグリア細胞であるオリゴデンドロサイトへの分化誘導を神経幹細胞経由で試みた。オリゴデンドロサイト特異的な遺伝子発現をRT-PCRで確認し、特異的なタンパク質を免疫染色で確認した。
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