本研究では、4都道府県の衛生研究所で過去に発生した病原因子不明大腸菌が原因と疑われる集団下痢症事例の13件について調査した。これらの事例で分離された大腸菌149株について、ゲノム配列を決定し、血清型、シーケンスタイピング、系統解析などを行った結果、7事例において大腸菌が集団下痢症の原因菌であったと推察された。各事例の株は、異なる血清型に分類され、一部の株では既知の病原因子と高い相同性を示す遺伝子も検出されたが、ヒトへの病原機構は解明されておらず、さらなる検討が必要である。今後は、健康保菌者由来の常在大腸菌とのゲノム比較や多くの事例を用いたより大規模な解析が必要であると考えられる。
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