研究課題/領域番号 |
20K21529
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
千葉 英樹 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (00295346)
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研究分担者 |
杉本 幸太郎 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (40791009)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 組織再生 / 幹細胞 |
研究実績の概要 |
熱傷・外傷・手術創や糖尿病等による重度の全層性皮膚欠損は難治性であり、加えて瘢痕が残ることや皮膚付属器の再生が不十分なことが問題となっている。また軟骨損傷は再生しにくく、自家培養軟骨移植の適応疾患は限られている。一方脳神経は最も再生困難な組織の一つであり、例えば脳梗塞では生体内の神経幹細胞が遊走し新生ニューロンが出現するものの、その大部分は死滅することが知られている。 我々は、幹細胞が自身の細胞間接着分子Junctional adhesion molecule-C (JAM-C)の細胞外ドメインを切り出すことで、自らに利する周囲微小環境(ニッチ)を作り出すことを突き止めた。また切断されたJAM-C可溶体 (sJAM-C)は生体組織間質に沈着することが分かった。さらにゲノム編集技術を用いて、切断されたJAM-C可溶体 (sJAM-C)が幹細胞上のJAM-Bとヘテロフィリックに会合することでADSCの細胞接着、細胞増殖、および幹細胞性維持を促すことを明らかにした。またマウス皮膚全層欠損モデルを用いて組織学的検討を行ったところ、皮膚組織再生におけるsJAM-Cの有効性が示唆された。 今後はsJAM-C及び応募者が同定したsJAM-Cペプチドが様々な幹細胞のニッチとして機能するかを明らかにし、新規幹細胞培養法を確立する。また「sJAM-C及びその部分ペプチドの生体応用」によって、幹細胞が傷害部位やニッチ領域に移動・集積するホーミング能力を最大限高め、従前とは全く異なる斬新な皮膚・軟骨・神経再生を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍による新規動物実験の自粛および本学動物実験施設の新築工事の影響を受け、皮膚組織再生実験の実施に支障をきたしたため。
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今後の研究の推進方策 |
ラット皮膚全層欠損モデルを用いて、新規幹細胞ニッチシグナルを利用した皮膚組織再生を目指す。またストーマ保護剤で創部を被覆することで、げっ歯類特有の総収縮による影響を排除する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による影響で新規動物実験が制限されたため、次年度使用額が生じた。 1)sJAM-C及びその部分ペプチドを利用した幹細胞培養法の確立:JAMsは様々な分化細胞のみならず、ES細胞、造血幹細胞、神経幹細胞など多彩な幹細胞にも発現する。そこで様々な組織幹細胞(骨髄由来MSCおよび神経幹細胞を対象とする)や多能性幹細胞(ES細胞およびiPS細胞)においても、JAM-Cの細胞外ドメインが切断されるかを明らかにする。またsJAM-Cやその部分ペプチドが、上記4種類の幹細胞の培養補助剤としても有用かを明らかにする。 2)sJAM-C及びその部分ペプチドの生体応用:正常マウス及びラットの皮膚・軟骨・脳神経組織におけるJAM-C発現細胞やsJAM-Cの細胞外基質沈着の有無を明らかにする。またデルマパンチで表皮・真皮・皮下組織全層を欠損させたラット両背側創傷部に「溶媒、sJAM-CまたはsJAM-Cペプチドを溶解したPBS」を1回/日滴下し、創傷治癒率の経時変化を調べる。加えて3/7/14日後に皮膚組織について病理組織学的評価と分子生物学的解析を行う。組織学的には特殊・免疫染色による検討も加え、「創傷部における瘢痕・肉芽組織、新生血管、再生皮膚付属器、炎症細胞およびMSCsの有無と程度」を評価する。またストレプトゾトシンで糖尿病を誘発したマウスにおける難治性皮膚潰瘍モデルでも、同様に評価する。
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