研究課題
パーキンソン病(PD)は、α-Synucleinの凝集が神経回路を伝搬して広がる「プリオン病」の一種であることが明らかになってきた。これまでの病理学的なエビデンスからα-Synucleinの凝集化の起始部位として消化管神経叢がその有力な候補として指摘されている。PDが「プリオン病」であるとすれば、消化管神経叢がシード(凝集の種)の起点となる理由の一つとして、食物由来のα-Synucleinシードが想定される。本研究では、α-Synucleinシードが食物から消化管上皮を経て消化管神経叢、中枢脳へと伝搬する可能性および伝搬リスクを高める要因を探索する。これを様々な条件設定でかつ迅速に評価するため、モデル動物としてPD遺伝子変異でα-Synucleinの凝集が再現できるショウジョウバエを用いて解析する。α-Synuclein凝集とともにデキストラン硫酸ナトリウムを餌に混ぜ、消化管に炎症を起こすモデルをハエ三齢幼虫にて構築した。α-Synucleinを神経特異的に発現させ、食道に投射するセロトニン神経をCD8::GFPにて可視化し、α-Synuclein線維を特異的に染める抗体にて、セロトニン神経軸索で形成されたα-Synuclein線維を検出した。セロトニン神経の機能低下は、着色した餌の消化管への移送の遅れとして定量した。α-Synuclein線維を含む餌で飼育したハエは、成虫においても消化管の機能低下が認められ、食餌からのα-Synuclein凝集の伝播性が示唆された。神経活動の低下をさらに電気生理学に記録することを試みたが、近傍の筋肉の収縮による運動が激しく、記録を取ることが困難であった。ハエにおいてα-Synuclein凝集の伝播が観察されたことから、今後、PD原因遺伝子変異が炎症性に関与する機序の解明のためのモデルとして応用することを計画している。
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https://www.juntendo.ac.jp/graduate/laboratory/labo/parkinsons_disease/k4.html