研究課題
ウィルス等の抗原が体内に侵入すると、B細胞はそれに対する抗体を産生するとともに、記憶B細胞に分化し永く生存する。再び侵入した同じ抗原に出会うと、記憶B細胞は増殖した後形質細胞に分化して抗体を産生するか、胚中心B細胞に分化し記憶B細胞を再生する。この2種類のリコール応答は、それぞれ、CD80-high細胞とCD80-low細胞という異なる記憶B細胞サブセットに主に担われている。私たちは、この2つのサブセットへの分化運命は初回の免疫応答においてB細胞が受けるCD40シグナルの量により強く影響されることを見出した。すなわち、より抗原親和性の高いB細胞は優位な抗原提示を介してT細胞からより強いCD40刺激を受け、CD80-high 記憶B細胞へと分化する。一方、抗原親和性の低いB細胞は比較的低いCD40シグナルを受けてCD80-low細胞へと分化する。本研究では、この2つの記憶B細胞サブセットの維持およびリコール応答の制御機構を解明することを目的とする。それにより、いずれかの記憶B細胞サブセットを優位に誘導できる新たなワクチンの開発が可能となる。また、自己免疫疾患において、自己反応性記憶B細胞が自己抗体の産生源となる機構の解明、また、その制御方法の開発に応用したい。本年度はこの後者について研究が進展した。IgA腎症モデルマウス(gddY)を用いて研究を行い、gddYマウスの血清IgAは腎糸球体メサンギウムに結合することを見出し、その自己抗原を同定した。また、このIgA自己抗体を産生する形質芽細胞がgddYマウスの腎に蓄積しており、そこから単離したIgAのV領域には多数の変異が入っていた。さらに、自己抗原に結合するIgA+ 記憶B細胞がgddYマウスの腎所属リンパ節に存在することを見出した。以上より、gddYマウスでは胚中心反応を繰り返した(おそらくCD80-low型の)自己反応性記憶B細胞が長期にわたるIgA自己抗体産生の元となっていると思われる。
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