研究実績の概要 |
「細胞接着分子群の結合の網羅的解析による新規がん病態解析法の構築と鍵分子の機能解析」の研究課題の下に、以下の3項目について研究を実施し、以下の成果を得た。 1)IgSF 389分子、インテグリン24分子の分子間結合検索系の構築:特定のIgSF分子と結合するIgSF分子群、インテグリン分子群を網羅的に解析する目的で、まず、IgSF分子群約300分子の細胞外断片をクローン化、精製し、標識結合分子として ALPHA法、固相化タンパク質としてSPRi 法に供する系を構築した。さらに分子-細胞、細胞―細胞、細胞-組織間の細胞間相互作用を解析する系を構築し、分子間相互作用に基づく生理作用の定量化を試みた。 2) がん転移、腫瘍免疫、ウイルス感染に関わる細胞間接着鍵分子の同定:CADM1等の細胞接着分子、また免疫チェックポイントに関わる結合分子対を上記実験系により検索し、免疫チェックポイント候補2分子対を含む新規結合分子を同定した。未知の細胞やウイルスの結合分子を網羅的に検索する手法を予備的に構築した。 3) 同定された IgSF 分子群の機能解析と、対応する接着分子病の実態解明:成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)、小細胞肺がんで高発現する細胞接着分子CADM1について、リンパ腫、並びに血管内皮細胞両者でのCADM1 の発現とトランス・ホモ結合が、マウス尾静脈注入後の肝転移に必須であることを示し、がん転移におけるIgSF分子を介する結合の重要性を示した。また、悪性黒色腫細胞で高発現し、転移を亢進するIgSF分子群を2種同定し、その結合分子を同定し、機能解析を行った。さらに、小細胞肺がんの浸潤、転移を野生型マウスで検証できる、Tp53, Rb遺伝子の二重、Tp53, Rb, Cadm1遺伝子の三重欠損マウスを作成し、自然発生小細胞肺がんから培養がん細胞を樹立した。
|