研究課題/領域番号 |
20K21556
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研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
田口 歩 愛知県がんセンター(研究所), 分子診断TR分野, 分野長 (50817567)
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研究分担者 |
松下 博和 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍免疫制御TR分野, 分野長 (80597782)
山口 類 愛知県がんセンター(研究所), システム解析学分野, 分野長 (90380675)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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キーワード | 難治がん / がん抗原 / 個別化がんワクチン / プロテオミクス / HLAクラスI結合ペプチド / 免疫グロブリン結合タンパク質 / PDXモデル / PDC |
研究実績の概要 |
がんワクチン療法は、免疫チェックポイント阻害剤との併用など、複合的がん免疫療法の1つとして大きな期待が寄せられている。個別化がんワクチンのターゲットとなるがん抗原は、現在、次世代シーケンサーによるゲノム情報に基づく、変異ペプチド(ネオアンチゲン)として予測同定されているが、免疫応答を誘導するのは、ネオアンチゲンのごくわずかである。本研究では、患者腫瘍組織移植(PDX)モデルにおいて、プロテオゲノミクスを応用した超高感度HLAクラスI分子結合ペプチド(HLAリガンドーム)解析を開発する。また、血漿中の自己抗体に結合している抗原タンパク質の網羅的プロテオーム解析を行う。これらの解析により、実際にがん細胞表面に提示されている抗原ペプチドと、生体で実際に免疫応答を引き起こしている抗原タンパク質を同定し、その統合的な解析から、真に免疫原性の高いがん抗原を同定する。本年度は、通常のデータベースサーチに加えてプロテオゲノミクス解析とde novoアミノ酸シーケンシングの統合による革新的なペプチド同定パイプラインの開発を完了した。患者由来肺がん細胞(PDC)、胃がんPDX腫瘍において高深度HLAリガンドーム解析を行い、抗原ペプチドのHLAアリルへの結合親和性スコアと統合して有望なペプチドの選択を進めている。また、自己抗体結合抗原解析においては、pH勾配液体クロマトグラフィーを応用して抗原を溶出することで、1,000個超の抗原同定が可能なハイスループット自己抗体結合抗原解析法を開発した(特願2022-152089)。現在同一患者由来のHLAリガンドームデータと血漿自己抗原プロファイルの統合解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、通常のデータベースサーチに加えてプロテオゲノミクス解析とde novoアミノ酸シーケンシングの統合による革新的なペプチド同定パイプラインの開発を完了した。これにより、ペプチド同定数を検体当たり10,000~15,000個にまで増加させることに成功した。同一症例から細胞傷害性T細胞が単離できた4例の肺がんPDCと8例の胃がんPDX腫瘍において高深度HLAクラスI分子結合ペプチド(HLAリガンドーム)解析を行い、抗原ペプチドのHLAアリルへの結合親和性スコアと統合して有望なペプチドの選択を進めている。また、自己抗体結合抗原解析においては、pH勾配液体クロマトグラフィーを応用して抗原を溶出することで、1,000個超の抗原同定が可能なハイスループット自己抗体結合抗原解析法を開発した(特願2022-152089)。現在同一患者由来のHLAリガンドームデータと血漿自己抗原プロファイルの統合解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
HLAリガンドームデータと血漿自己抗原プロファイルの統合解析から、最終的ながん抗原同定パイプラインを構築する。また、抗原候補として選択されたHLAクラスI分子結合ペプチドについては、同一症例由来の細胞傷害性T細胞を用いて、その抗原特異的かつHLA拘束性の細胞傷害活性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、プロテオーム解析計画にずれが生じたため、次年度使用額が生じた。解析計画を修正し、令和5年度に使用する予定である。
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