本研究の目的は、従来用いられてきた超伝導量子干渉素子(SQUID)に代わる超高感度の光ポンピング原子磁気センサ(OPM)を開発し、それによって多チャネル脳磁図(MEG)計測を実現することである。さらに、このOPMを用いて神経磁場を磁気共鳴信号変化として直接捉える新原理の機能的MRI(fMRI)を実現し、MEGとの同時計測を可能とする次世代のニューロイメージングへの実現に道筋をつけることを目指して実施した。 最終年度は,まず光ファイバや光学系などを一体化した小型のOPMモジュールの開発に注力し、浜松ホトニクスとの共同研究によりSQUIDと同等以上の超高感度ながら長寿命の小型OPMモジュールを開発することに成功した。さらに、このOPMモジュールアレイにより開眼閉眼に伴うα波帯の事象関連脱同期と視覚誘発脳磁界の多チャネル計測を達成できた。加えて、初年度から開発を進めてきた一つのセル内に複数の計測点を設けることによりセンサ特性の揃ったK-Rbハイブリッド型OPMにより聴覚誘発応答ならびに視覚誘発応答の多チャネル同時計測も実施し、OPMを用いた2つの異なる方式による多チャネルMEG同時計測の実証と有用性を示すことができた。 以上と並行して、神経磁場による2次的共鳴現象を新たな計測原理とするfMRIとMEGとの同時計測の実現に向け、OPMを既存のRFコイルに代わるMR信号計測用センサとして用いることにより感度向上させる超低磁場 MRIの開発を進め、プロトタイプによる MR画像の取得に成功した。さらに、初年度に引き続き永久磁石型の0.3T-低磁場MRI装置を用い、頭部を模したファントムを対象とした新原理 fMRIの実験的・理論的検証を行い、低磁場および超低磁場 MRI による新原理 fMRI の実現可能性を示し研究を完結した。
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