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2020 年度 実施状況報告書

尿細胞より直接誘導した神経前駆細胞を用いる脳神経疾患のマルチオミクス解析

研究課題

研究課題/領域番号 20K21570
研究機関浜松医科大学

研究代表者

才津 浩智  浜松医科大学, 医学部, 教授 (40402838)

研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2022-03-31
キーワードマルチオミクス解析 / 尿細胞 / 末梢血単核球 / 神経葉細胞
研究実績の概要

(1)患者尿中の上皮細胞から直接誘導した神経前駆細胞の樹立
他施設から送付してもらう状況を考えて、尿中上皮細胞(尿細胞)の培養方法の最適化を行った。その結果、尿中での保存が短いほど生存細胞が多くなり、4℃保存では生存率が低下することが分かった。そのため、すぐに遠心して培地に交換し、32℃保存で輸送するプロトコールとした。3検体から樹立した尿細胞のRNA-seqを行ったところ、皮膚線維芽細胞やiPS細胞と似た発現プロファイルを示し、臨床的に利用可能な、転写が活発な細胞として有用と考えられた。低酸素+低分子での培養では神経前駆細胞のコロニーが認められたものの、その増殖は不良で、尿細胞との混合培養からRNA-seq用の検体をえることは難しかった。
(2) 末梢血単核球から直接誘導する神経様細胞の樹立
申請後に末梢血単核球からわずか3日間で神経細胞が誘導できるとする報告があった(NinomiyaらbioRxiv 2019)。この方法では神経様に形態変化する細胞の割合が低かったため、新たな培養方法を導入することで3日間培養での形態変化を促進することに成功した。この培養法法で得た神経様細胞の発現解析により、誘導によって血球としての特徴が失われて、ミトコンドリアや翻訳が活性化していると考えられる結果が得られた。また、誘導によって神経疾患の原因遺伝子の発現増加が認められた。短時間の培養時間であることも考えると、非常に有効な手法と考えられた。
(3)変異未同定例に対するトリオでの全ゲノム解析とRNA-seq解析
変異未同定症例の4トリオに対して全ゲノム解析を行い現在解析中である。RNA-seq解析では、Dropパイプライン(Yepez et al., Nat Protoc. 2021)を基に、発現量が異常な遺伝子、スプライス異常、片アレル性の発現遺伝子を抽出する解析パイプラインを確立した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初計画していた尿細胞からの神経前駆細胞の樹立プロトコールが確立できていない。一方で、尿細胞そのものが、臨床的に利用可能な、転写が活発な細胞として有用であると考えられ、また末梢血単核球から直接誘導する神経様細胞も短時間でできることからマルチオミクス解析での有用な細胞ソースと考えられた。

今後の研究の推進方策

以下のように、尿細胞からの神経細胞の分化と末梢血細胞からの神経様細胞の樹立の両方を進めて、患者の主治医が所属する施設の状況に応じて、最適の細胞ソースが選択できるようにする。
・尿細胞は侵襲がなく得られるmRNA量も多い利点があるが、採取直後に遠心処理を要する欠点もある。尿細胞からの神経分化に関しては、低酸素状態を使わずに低分子化合物だけで分化を誘導するプロトコールも申請後に報告されており(Sci Rep Nov 13;9(1):16707, 2019)、このプロトコールでの分化誘導を試みる。
・末梢血単核球から直接誘導する神経様細胞は、採血の侵襲が少なく、3日間の培養で終了する利点があるが、得られるmRNA量が少ない(1μg以下)欠点もある。尿細胞からの神経分化の次善の方法として培養系を進めて、全ゲノム解析とのマルチオミクス解析に用いる。

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公開日: 2021-12-27  

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