研究課題/領域番号 |
20K21572
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
葛谷 雅文 名古屋大学, 未来社会創造機構(医), 教授 (10283441)
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研究分担者 |
黄 哲 名古屋大学, 医学系研究科, 特任講師 (30745112)
朴 麗梅 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (60867208) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | サルコペニア / 細胞治療 / 間葉系幹細胞 / マウス |
研究実績の概要 |
2020年度の研究目標は臍帯由来間葉系幹細胞 (UC-MSC)が老化を制御し、老化を基盤とする臓器障害を抑制できるかどうかを検討した。当該研究では老化による骨格筋萎縮・筋力低下(加齢性サルコペニア)を臓器障害のターゲトとして検討する。 24週齢の老化促進マウス(Senescence-Accelerated Mouse: SAM, prone10)の尾静脈よりUC-MSC(1x106/100μl)を投与し、運動負荷群(週3回、30分/回のトレッドミル負荷)、非負荷群に分け、経時的に体重、筋力、持久力を測定し、36週齢で血液、下肢骨格筋を採取した。結果は対照と比較しUC-MSC投与群では筋力、持久力の有意な増加、下肢筋(腓腹筋、ヒラメ筋)の体重当たりの重量、筋繊維サイズ、PGC1-α、COX4の発現、電顕でミトコンドリア数の有意な増加を認めた。また細胞治療群では下肢筋肉の線維化、アポトーシス細胞、CD68陽性細胞数、TNF-α、MCP-1発現の有意な減少を認めた。さらに細胞治療群では骨格筋の修復に関与するSirt1、Myosin heavy chainのタンパク発現、PCNA陽性細胞数、Desmin/Laminin5陽性細胞の有意な増加を認めた。運動を併用することによりさらにこれらの細胞治療効果は増大した。以上の結果よりUC-MSCによる細胞治療は老化現象の一つであるサルコペニアを改善することが明らかになった。そのメカニズムには抗炎症作用、ミトコンドリア活性化、細胞増殖作用などが考えられる。それらのメカニズムを明らかにする目的でマウス筋芽細胞株であるC2C12細胞にUC-MSCの細胞上清を投与したところ、H2O2により誘導されるアポトーシスが有意に抑制され、細胞上清にはIGF-1, HGF, VEGFなど多くの成長因子が存在していた。今後さらにそのメカニズムの解明を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り研究は実施できており、また当初推測していた結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は当初の計画に沿って細胞治療の老化に伴うサルコペニア治療効果のメカニズムの解明を進める。動物モデルを使用し、UC-MSC治療の効果として、MSC自体が筋肉組織に移行し、分化し、筋細胞に移行するのか、もしくはUC-MSCのパラクライン作用が関与しているかを明らかにする。 まずUC-MSCを蛍光トレーサーでラベリングしSAMP10マウス尾静脈経由で投与する。その後経時的にin vivo イメージングによる追跡実験を実施する。 UC-MSCのパラクライン作用を明らかにする目的で、UC-MSC由来のexosomeのサルコペニアへの効果を検証する。具体的にはUC-MSCの48時間後の無血清培養上清を採取し、超遠心法 (4度、35.000rpm、70分 を二回実施)で得られた沈殿物を透過電顕ならびにexosome表面抗原タンパク(CD9、CD63、CD81)をwestern blotで確認する。24週齢のSAMP10マウスの尾静脈経由でexosome (50㎍/100μl)を投与し、UC-MSC投与実験と同様なプロトコールで実験を進める。なお、昨年度実施したC2C12細胞実験を継続し上記で得られたexosomeのH2O2によるアポトーシスへの効果(Tunel染色、Bcl-2、Bax発現)、C2C12細胞の筋細胞への分化の影響(Myogein, MyoD1、MYF-5、MYF-6の発現)、ミトコンドリアへの影響(電顕、Sirt1, PGC1発現)、細胞老化への影響(doxorubicin投与による老化もモデルを使用、SA-beta-gal染色)などを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品がより安価に購入できたため、余剰金が発生した。来年度の使用額に合わせて消耗品購入に使用する。
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