研究課題
(研究の具体的内容)成果1:広域周波帯脳波(wide-band EEG): 前兆のある片頭痛(MA)、前兆のない片頭痛(MO)と頭痛専門医が確定診断し、臨床上の必要から脳波検査を施行した144人の患者で、患者の臨床上のプロファイルとそれらの脳波解析結果(脳波通常判読で用いる時定数0.3秒、および緩電位を捉える時定数2秒を用いた判読)との関連を解析した。その結果、①MA/MO両者で、間欠的デルタ徐波がみられ、年齢依存性に出現部位が後頭部・側頭部と異なっていること、②有症状期や家族歴のある患者群で、それぞれ発作間欠期、家族歴のない患者群に比し、後頭部に緩電位(1Hz未満の徐波でアストロサイト活動との関連が示唆される)が検出されることを見出した。本成果は徐波と緩電位脳波が片頭痛の病態のマーカーとなる可能性を示唆しており、論文を作成し投稿段階となった。成果2:運動症状を伴う重症型の片麻痺性片頭痛(HM)ではMA/MOと比較し脳波異常の頻度が高いことを見出し、国内学会で報告した。成果3:脳波-機能的MRI同時記録(EEG-fMRI): 上記の脳波変化の脳内起源を深部を含めて明らかにし、さらに症状の側方性との関連を考察するために、脳波異常を伴うHMの6人の患者から同意を得て記録し、解析を行った。(研究の意義・重要性)片頭痛の疾患バイオマーカーとしての脳波異常の意義を緩電位の新しい視点から抽出してまとめ、片頭痛と類似のCSD(皮質拡散脱分極)関連脳神経疾患への応用の可能性の礎となる知見を得た。さらに片頭痛の特殊型であるHMに着目して、片頭痛との神経生理学的相違を明らかにし、神経徴候と脳波変化の起源を探るEEG-fMRIの臨床応用の道を展開することができた。
1: 当初の計画以上に進展している
Wide-band EEGを用いた片頭痛脳波研究に関しては論文作成を済ませ、現在国際専門誌に投稿中である。昨年度末に実際の患者においての記録準備が終了したEEG-fMRI研究では、順調に記録ができており、解析も進んでいる。
Wide-band EEGに関しては、MA/MOの脳波変化についての論文のアクセプトを目指し、内外に成果を広める。また、フォローアップ、および徐波以外のデータ解析、あるいは本データを二次利用した研究を検討する。HMやEEG-fMRIに関してはさらに症例の蓄積と解析手法の改善を図っていく。
COVID-19に対する国内の各種規制の影響で予定していた出張が減少し、また論文作成が遅れた。次年度はさらなる規制緩和が予想され、他分野との交流のためにも学会に参加を含む出張を行い、今後の共同研究のために研究者との交流を含めた基盤作りと成果の論文化を行う。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (28件) (うち国際共著 2件、 査読あり 27件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (88件) (うち国際学会 12件、 招待講演 36件) 図書 (1件)
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