研究課題
アルツハイマー病(AD)に代表される認知症治療において,近年,特定の抗原を認識する抗体を利用した治療の研究が行われている.ADにおけるアミロイドβ(Aβ)に対する抗体療法,ワクチン療法がその代表だが,これまでのADに対するAβ抗体医療は効果と副作用のバランスから,実用レベルには至っていなかった.抗体を用いた治療を試みる場合,自己免疫機序の副作用を起こさないためには,いかに「正常タンパク質・正常抗原を攻撃しないか」が重要であり,ターゲットとすべき抗原は,正常時には発現がなく,認知症など異常が生じた時に限定して発現誘導されるものが理想である.本研究は,条件を満たす抗原として,ミクログリア細胞膜に病態環境下でのみ発現し,細胞外にグルタミン酸を放出するシスチン・グルタミン酸交換系トランスポーター“ System xc- ”の構成分子「xCT」に注目し,副作用が少なく,かつAD以外の認知症も含めた認知症全般に応用可能な抗体療法の可能性を探るものである.R3年度は,(1)R2年度にファージディスプレイ法による取得したxCT細胞外ドメインを認識するFab抗体5候補の分析を行った.その結果,5種の候補抗体全てにおいて,ウエスタンブロットでxCTを特異的に認識することを確認した.さらにその中で最も認識能に優れた抗体を大量に作成した.また,(2)ミクログリアによる検討に先行して,xCTを発現し,細胞増殖アッセイに癌細胞系cell lineが使用できることを見出し,細胞増殖への抑制効果があるかを検討したところ,一部の抗体に軽度ながら細胞増殖を抑制するデータが得られた.(3)遺伝子改変によるADマウスを飼育し,月齢ごとのADとしての病理変化(老人斑など)とxCT発現を検討する試料を作成した.作成した抗体は主にミクログリア(一部アストロサイト)のxCTと反応することを確認した.
すべて 2022
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J Clin Biochem Nutr
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