プリオン病以外のタンパク質異常凝集性神経変性疾患(アルツハイマー病、レビー小体病等)の伝達性や病原性はプリオン病と比較すると相対的に低く、そのメカニズムに質的な違いがあることが想定される。その要因として1つには、プリオンタンパク質(PrP)のC末端に翻訳後修飾として付加されるGPIアンカーの存在が考えられ、次にPrP自体、特に安定な3次元構造(主にαヘリックス構造)を取る後半部分の影響が挙げられる。本研究ではレビー小体病の病原タンパク質アルファシヌクレイン(Asyn)にGPIアンカーやPrP(100-231)を付加するように 遺伝子操作し、その凝集様式・疾患伝達性のメカニズムを解明することを目的とした。まず、GPIアンカー付加シグナルペプチドをAsynのN末とC末に導入し、AsynのGPIアンカー修飾型を構築した。GPIアンカー付加シグナルペプチドとしてはPrPのものを使用した。構築した発現ベクターを培養細胞(N2a)に一過性に導入し、Asynの発現をウェスタンブロットにより確認したところ、GPIアンカーが導入されたことを反映し、GPIアンカーのない通常のAsynより分子量は上昇していた。次に、恒常的発現細胞を得るため、薬剤セレクションを行ったが、高発現細胞を得ることはできなかった。しかし、遺伝子レベルの導入はPCRで確認していたため、プロテアソーム抑制剤を投与したところ、発現の上昇を認めたことから、GPI(+)Asynがプロテアソームでの分解が上昇している可能性が示された。 一方、AsynのC末にPrP(100-231)を付加した大腸菌由来リコンビナントタンパク質を精製し、RT-QuIC法の基質として使用したところ、高い変換効率を示すことが判明した。現在、この基質を用いたRT-QuIC法の最適化を継続している。
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