研究課題/領域番号 |
20K21581
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
家入 里志 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (00363359)
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研究分担者 |
連 利博 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (20140444)
山田 和歌 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 特任助教 (20457659)
加治 建 鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 特任教授 (50315420)
春松 敏夫 鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 特任助教 (70614642)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 胆道閉鎖症 / 出生前診断 / 肝門部嚢胞 / 臍帯血 / Liquid biopsy / 胎児治療 |
研究実績の概要 |
肝門部嚢胞性病変として出生前診断された患児の胎盤を病理学的に検討し、BA症例と胆道拡張症などの非BA症例とでVUEを随伴する頻度や胎盤の組織学的所見を比較することで、BAの病因における母児間免疫反応の関与を明らかにできると着想した。 また分娩時に得られる臍帯血中に含まれる母親由来細胞のDNA(non-inherited maternal antigen, NIMAのDNA)をrtPCR法により定量してBA患児と非BA児とで比較することで、迷入する母親由来細胞の量がBA発症に及ぼす影響を評価することが出来ると着想した。さらには母体血と臍帯血との混合リンパ球培養を行い、CFSE(5(and 6)-carboxy fluorescein diacetate succinimidyl ester)色素で標識しフローサイトメトリー法により増殖する細胞のphenotypeを分析(CFSE-MLR)することで、母親細胞に対する児の免疫学的寛容の程度や、母親抗原の刺激に反応して増殖するリンパ球の種類を同定することが可能である。CFSE-MLRの結果をBA患児と非BA児とで比較することにより、BA患児に対して母親由来細胞の及ぼす免疫学的な影響を明らかにすることが出来ると考えた。 なおBA患児臍帯血中の母親由来細胞の定量を行った報告や、BA患児臍帯血と母体血とでCFSE-MLRを行った報告は過去にない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
二卵性双胎児のうち一方がBAとして出生前診断された症例で、BAを発症した側の胎盤にのみVillitis of unknown etiology(以下VUE)が見られたことが報告された1)。VUEは末梢絨毛を中心に慢性炎症細胞が浸潤する病態で、35週以降に2~34%の頻度で生じ、子宮内胎児発育遅延や流産に随伴する所見とされている。VUEの成因は明らかにされていないが、最近は拒絶反応あるいはGvHD様の免疫学的反応の関与が指摘されている。なおBAの出生前診断症例における胎盤の組織学的所見を検討した報告は過去にない。 1)Kosaka et al. Pediatrics International. 2022;64(1)
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今後の研究の推進方策 |
妊婦健診において胎児超音波検査等により胎児の肝門部嚢胞性病変が疑われた妊婦が分娩施設の周産期母子医療センターを受診した際に、母体からは分娩前および分娩後の一般採血の際に8ml単核球分離用採血管を用いて8mlずつ2回採血する。検体は遠心後に転倒混和し冷蔵保存する。分娩後、胎盤は研究坂施設で冷蔵保存する。分娩時、臍帯血は8ml単核球分離用採血管を用いて2本以上採血し、遠心後に冷蔵保存する。分娩後の胎盤は協力施設で冷蔵保存し、研究分担者が協力施設に出向いて血液および胎盤の検体を回収する。胎盤検体は宮崎大学にて処理する。血液検体は鹿児島大学にて処理する。胎盤は臍帯付着部付近および辺縁、卵膜および臍帯から複数のサンプルを採取する。なおサンプル採取の方法はAmsterdam Placental Workshop Group Consensus Statementに準拠する。 分娩後、母体及び出生した児からそれぞれ専用のスワブを用いて口腔粘膜擦過検体を採取しHLA研究所に送付しHLAアレルを解析する。出生した児が胆道閉鎖症と診断された場合、1年後の児の血液生化学所見、肝移植の有無についても小児外科医が事務局へ郵送する。 児のリンパ球をHLA検査結果とともにFHCRCに送付し、母親由来細胞DNAの定量を行う。母体および児のリンパ球を用いて母児間混合リンパ球培養(CFSE-MLR)を行い、母親細胞に対する児の免疫学的寛容の程度および増殖するリンパ球の種類を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はコロナウイルス感染症拡大に伴い、共同研究施設との現場レベルでの連携がとりづらくなったこと、さらに発表予定の国内、海外学会が中止となったた め旅費を執行する機会が減ったことが主な原因であると考えます。今後は状況に応じての学会参加、Webでの情報交換や発信を行っていく。
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